日本リハビリテーション医学会(JARM2020)で線維筋痛症の研究成果を発表してきました!の報告です
なお、この研究発表は、昨年度の日本リハビリテーション医学会(JARM2019)で発表した研究結果の続編です。前回の研究発表をまだごらんになってない方はさっぱりわからない内容だろうと思いますので、まだご覧になってないかたは前回の研究発表の解説記事を先に見てね!
前回記事のリンクこちら
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https://ameblo.jp/u-mri/entry-12481052330.html
ではでは!
発表ポスター現物を公開します!
m9(・∀・)どーん
「線維筋痛症の脳白質異常を、脳画像検査で視覚化したよ」という発表です。
発表内容抄録原文はコチラ(読み飛ばし可)
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【目的】線維筋痛症は全身の広範な慢性痛を中核とする症候群で、認知症状や自律神経症状などの多彩な症状を随伴する特徴がある。線維筋痛症の脳画像研究では内側前頭前野などの痛み関連領域において皮質容積減少や白質FA値の異常などが報告されているが、日本人例での検討は我々の知る限りなされていない。よって、本研究を計画した。
【方法】対象は、当院の線維筋痛症専門外来を受診した患者で、米国リウマチ学会の1990年線維筋痛症分類基準(ACR1990)および2010年線維筋痛症予備的診断基準(ACR2010)の両方のクライテリアを満たした例のうち、拡散テンソルMRIを施行された16例(年齢(年)41.4±15.6,男性3例,女性13例)を線維筋痛症群とした。年齢をマッチさせた健常人31例を対照群として、線維筋痛症群との間で統計画像解析(VBM)を行い,FA値を比較した(SPM12, uncorrected p<0.001)。
【結果】conventional MRIで明らかな器質病変を認めたのは両群ともに0例だった。対照群と比し、線維筋痛症群で有意なFA値減少を認めた領域は、両側の脳梁膝部-内側前頭前野白質であった。
【考察】本研究で線維筋痛症群に有意な異常が示された領域は、過去のメタ解析結果と一致する。日本人を用いた検討でも同様の領域に異常が再現されることを示した点で本研究結果は意義深いと思われる。内側前頭前野は線維筋痛症に伴う広範な全身痛と多彩な随伴症状を同時に説明しうる病変であるが、同領域の異常はうつ病や身体表現性障害などの、慢性疼痛をきたす他の疾患でも見られるとされる。結果の解釈には慎重を要する。
さて、このままだとサッパリわからないと思うので解説します。
なお、くりかえしますがこの研究発表は、昨年度の日本リハビリテーション医学会(JARM2019)で発表した研究結果の続編です。前回の研究発表をまだごらんになってない方はさっぱりわからない内容だろうと思いますので、まだご覧になってないかたは前回の研究発表の解説記事を先に見てね!(リンクこちら)⇒https://ameblo.jp/u-mri/entry-12481052330.html
さてさて
この研究発表では、
①線維筋痛症のある人のグループを対象に
②MRIをとって
③健常者のグループ(対照群)と、脳の白質(神経線維があるところ)を比べています注1,注2。
注1:なお、神経細胞があるところは「皮質」です。皮質に関しての研究結果は前回の記事を見てね!(リンクこちら)⇒https://ameblo.jp/u-mri/entry-12481052330.html
注2:本研究では白質の健常さを拡散テンソルにおける拡散異方性(≒FA値)を使って比べています
結果を一文で言うと、
健常者のグループと比べて、線維筋痛症のグループには、脳梁(膝部)~内側前頭前野皮質下白質の異常があった(拡散異方性を示すFA値が有意に減少していた)[図2]。
という内容です。
ここで白質異常が示された領域は、前回の研究で線維筋痛症のグループで脳が小さかった内側前頭前野*という領域のすぐ近くで、下行性疼痛抑制系の一部です[図1][文献1]。
つまり、線維筋痛症がある人は、痛みのブレーキに関わる部分の脳に異常がある(・・・と言う結果は調べ方を変えても再現される)のです。
*内側前頭前野には内側前頭回と前部帯状回が含まれます
[文献1]. Bushnell MC et al. Cognitive and emotional control of pain and its disruption in chronic pain. Nat Rev Neurosci 2013;14:502-511.
この、内側前頭前野という領域は、痛みのブレーキだけでなく、注意や記憶などの認知機能や、うつや不安に関わる感情、自律神経機能にも関わる領域です。
線維筋痛症は、痛みだけでなく、様々な認知機能の問題、感情の問題、自律神経の問題も伴います。
内側前頭前野の異常が線維筋痛症のグループで示されたことは、非常に理にかなっています。
今回異常が見られた領域は、海外データのメタ解析結果[文献2]で異常が示された領域とも一致しています(なお、この研究結果と同様の手法を使った前回の研究でも同様の結果になったので、「日本人データを用いても海外データを用いた報告と同様の結果になること」は示されていると考えてよいでしょう)。本研究の意義は「脳を調べる方法を変更しても同様の結果になることを示したこと」です。
[文献2]. Lin C, et al. Gray Matter Atrophy within the Default Mode Network of Fibromyalgia: A Meta-Analysis of Voxel-Based Morphometry Studies. BioMed Research International. Volume 2016, Article ID 7296125, 9 pages
今回の結果を解釈する上で気をつけなくてはならないのは、以下の2点です。
①. 本研究で線維筋痛症のグループに認めた脳の異常は、病気の原因なのか結果なのかはわからない。
②. 内側前頭前野の脳萎縮(皮質容積減少)は、他の疾患でも認められる[図3]。
本研究の方法では、残念ながら、脳の異常と線維筋痛症の因果関係の順序はわかりません。
痛みがあるから脳に異常が起きてしまうのかもしれないし、脳に異常があるから痛みが生じるかもしれないのです。
また、本研究で示された脳異常は、他の病気でも認められます。
うつ病や身体表現性障害(身体症状症)、発達障害などでも、内側前頭前野は小さい傾向があるのです[図3][文献3]。
よって、現時点では、脳画像で線維筋痛症を診断することは出来ません。
内側前頭前野の異常が何かしら線維筋痛症に関わっていそうだ…というまでしかわからないのです。
[文献3]. 粳間剛 リハビリPTOTSTDrのための新しい脳画像の勉強方法の本 三輪書店 2019
以上、日本リハビリテーション医学会(JARM2020)のご報告でした!
ご参考までに!
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