テレビ各局の自民党総裁選報道が異常です。読者からも「自民党の広報機関でないはず」「裏金事件、大軍拡、暮らしの問題など国民の関心事はそっちのけ」といった怒りの声が寄せられています。                     (藤沢忠明)

 

岸田文雄首相が、裏金事件や統一協会との癒着で「国民の不信を招いた」などとして総裁選への立候補を断念を表明したのが8月14日。テレビは翌日から、地元の盆踊り大会に参加した▷これまで見向きもしてこなかった能登半島地震の被災地を視察▷党所属議員へのあいさつ回り・・・など゛候補者゛の動向を競い合うように伝えましす。

 

あきれたのは、選挙区内での似顔絵入りのうちわを配布したとして2014年に法相を更迭された安倍派の松島みどり衆院議員が、当時、法相を引き継いだ上川陽子外相のために、議員会館の自室から「女性だから」と支持を呼びかける電話をかけたり、地元の催しで訴えているところを「総裁選の動き」の一環として長々と紹介したことです。

 

公共電波使い宣伝

 

これらは、公共の電波を使って伝えるべきことなのか。一事が万事、総裁選に名を借りて自民党の宣伝に一役買っていることになります。

 

NHKは、小林鷹之前経済安保担当相(8月19日)河野太郎デジタル相(同26日)らの立候補表明の記者会見を生中継しましたが、石破茂元幹事長ら「候補者」を「生出演」させ「生直撃」することに一生懸命です。

 

結局、こうした「生出演」は、「候補者」の言い分を垂れ流すことになります。

 

たとえば、河野氏を「生直撃」した8月31日の日本系「ウェークアップ」スタジオには、「岸田政権で安保政策を大転換」として「反撃能力保有」「5年間で防衛費43兆円」などの言葉がパネルで表示されているのに、「総理になったらいつアメリカに行くのか」「安倍元総理はトランプ大統領とゴルフをして、距離を縮めたが、゛もしトラ゛とどう付き合う」などという質問。問うべきは憲法違反の大軍拡ではないでしょうか。

 

批判的、検証的に

 

こうしたなか、「候補者乱立の総裁選」 ゛政治とカネ゛負の遺産は」と特集したのは、8月26日のTBS系「サンデーモーニング」。TBSスペシャルコメンテーターの星浩さんの「自民党総裁選は旧統一協会、裏金事件、円安など安倍政治の負の遺産の総括をが本質的なテーマだが、そこが見えてこない」との指摘を紹介。スタジオの朝日新聞論説委員の高橋純子さんは、「マスコミへの露出が増えれば党勢回復につながる。そして看板を差し替えて刷新感をだし、総選挙をやって禊(みそぎ)にしようというのが見え見え」として「自戒を込めてですが、メディアも(候補者)一人一人の発言などを批判的、検証的に見ていく必要がある」と述べました。

 

党員以外には投票権のない総裁選の報道のあり方が問われます。

 

 

2024年9月6日付「しんぶん赤旗」より

 

 

現在なまでに正式な立候補表明をしていない人には、極右のT・S氏と、マスメディアが「総理総裁になって欲しい」と期待して報道している「世襲4代目」のK・S氏がいます。特にK・S氏に対しては電波メディアはおろか雑誌メディアも期待を込めた報道や記事を出しているように思えるのです。彼が総理総裁になればすべてがうまくいくかのように国民に印象付けようとしているようです。

 

またT・S氏は「自衛隊を国防軍に替える」などという主張をしています。すでに改憲がなった時の公約を語っているのです。もはや自民党の国会議員たちは「日本国憲法」は「いずれは改憲するのだから」という理由で順守するのに値しないと考えているのかもしれません。

 

そして「改憲」がうまくいったら、現在の「日本国憲法」を全面的に改めた「自主憲法」制定の動きが出てくるのではないか。そしてその内容は「国民の権利」に関した部分を「法の範囲内」という文が盛り込まれることになるのでしょう。私には少なくとも極右派はそこまで視野に入れているように思えるのです。ここでは「大日本帝国憲法」を「日本国憲法」に替えた時の手法が踏襲されることになるのでしょう。「自主憲法制定」は自民党結党時からの目標でしたから。1955年当時の自民党結党大会の写真をご覧下さい。ステージの上に「自主憲法制定」というスローガンが掲げられています。

 

そして自民党員でなく、投票権を持たない一般の国民に対して、あたかも自分たちも自民党総裁選に参加しているかのような情報操作を行っているのです。この手法はとりわけ小泉政権の時に目立っていたように思えます。こうして一般国民の不満のガス抜きをしているのです。

 

マスメディアに携わる人は「政治」が好きなのではないのです。「政局」が好きなのです。だから「自民党総裁選」となれば一気に覚醒するのでしょう。何しろ次の内閣総理大臣が事実上決定するのですから。