政府は、第2次安倍晋三政権以来、歴代政権が看板に掲げてきた「地方創生」の失敗を事実上認めました。「デジタル田園都市国家構想実現顔意義」(議長・岸田文雄首相)が10日、政府が10年間取り組んできた「地方創生」は「人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある」とする報告書をまとめました。

 

個々の努力は限界

 

報告書は「人口減少に歯止めをかけ、東京圏への過度な一極集中を是正するための対策は、わが国全体で戦略的に挑戦すべき課題」とし、「自然減」「社会減」それぞれの要因に応じて適切な対応が必要だと強調。特に「自然減」への対策では「個々の自治体の努力には限界ある」などと指摘しています。

 

地方の人口減少が注目されたきっかけは、増田寛也基総務相を座長とする有識者会議が、30年で若年女性人口が半減する「消滅可能性都市」を公表(2014年)したことでした。第2次安倍政権は、全国の市区町村に「人口ビジョン」と「総合戦力」の策定を強制。政府が設定した枠組みや基本目標に沿って交付金を配分し、自治体を誘導しました。

 

その結果、ごく一部の自治体で人口が増加しただけで、全国的な人口減少はむしろ加速。東京圏への転入超過数は新型コロナが感染拡大した数年間を除き、毎年10万人を超えています。

 

新自由主義に固執

 

人口減少と地方衰退のおおもとには、労働法制の規制緩和による人間らしい雇用の破壊や、教育費をはじめ子育てへの重い経済的負担、ジェンダー平等の遅れなど、暮らしや権利を破壊する政治があります。報告書は、人口減少対策などの「地方創生」を自治体が任せにしてきたことへの反省は見せているものの、相変わらずデジタルの活用や規正緩和などの新自由主義的政策に固執しています。これでは地方は疲弊し、人口は流出するばかりです。                         (森糸信)

 

 

2024年6月17日付「しんぶん赤旗」より

 

 

人口が増加した都道府県は、最新の統計では東京都のみでした。明らかに東京一極集中、首都圏一極集中となっています。これを克服する「特効薬」はありません。不断の努力あるのみでしょう。