改定入管法・技能実習方が14日の参院本会議で可決・成立しました。政府は外国人労働者を受け入れ、共生社会に道を開くかのように説明しますが、改定の実態は逆です。創設する外国人労働者の「育成就労」制度は、深刻な人権侵害の温床となってきた技能実習制度を温存。永住許可を取り消す規定を新設し、人権侵害を加速させる危険があります。

 

政府は技能実習制度の目的は、技術移転による国際貢献だと説明してきました。しかし実態は外国人を非熟練・低賃金の労働力として使い、深刻な人権侵害を引き起こしてきました。失踪が相次ぎ、国連自由権規約委員会などからも人権侵害を指摘されています。

 

使い捨ての懸念

 

技能実習制度の名前を変えて創設する育成事業制度は、特定技能1号水準の人材の育成と当該分野の人材確保を目的に掲げます。人権侵害の防止を図るとして、技能実習で原則認められていない「転籍」(職場の移動)を認めるとしますが、「本人の意向がによる転籍」は同じ分野に限定。就労後1~2年は認めず、日本語・技能要件など厳しい制限があり、労働者が持つ職場移動の自由は事実上ありません。日本共産党に仁比聡平参院議員は「日本語教育をしない、技能試験にも行かせない不当な監理支援機関のもとの労働者ほど転籍できない」と矛盾を指摘しました。

 

育成就労外国人を支援する「監理支援機関」について政府は、外部監査人の設置義務化などで中立性を確保するとしていますが、受け入れ企業の役員との兼任を排除していません。手数料収入に依存し受け入れ企業から独立できない機関では労働者を守れません。

 

農業・漁業など季節性のある分野に派遣労働の仕組みも導入。中間搾取や使い捨て労働の懸念があります。

 

実習生が多額の借金を背負う問題では、原則として新たに2国間取り決めをした国からのみ受け入れ、手数料負担の軽減を図るとしています。しかし従来の取り組みの延長では実効性がありません。

 

突如盛り込まれ

 

さらに政府は、新制度で永住につながる外国人が増えるとして、税金や社会保険料などをを故意に支払わない場合などに永住許可を取り消せる制度を新設。この規定は法改定にに関する有識者会議の最終報告書に含まれていないのに、「永住許可制度の適正化を行う」という政府方針の閣議決定をうけ、突如盛り込まれました。審議を通じ、当事者の聞き取りすら行われていないことが明らかになり、規定を必要とする濃っm虚のデータは最後まで示されませんでした。

 

失業などでやむなく是金などを滞納することは誰にでも起こり得ます。永住権が日本で培った十分な生活基盤を失わせることは人道に反し、日本で暮らす全ての外国人の地位を不安定にします。

 

在日本大韓民国民団中央本部の金利中団長は、同法成立の14日に談話を発表。「永住外国人に対する偏見の助長やさらなる排外主義の台頭につながる」と「『永住者』とその家族を、この社会の一員、市民ではなく、いつでも社会から排除されうる極めて不安定な生活をしなければならない立場に追いやるもので、政府が目指す『共生社会の実現』に逆行するとして、見直しを求めました。

 

外国にルーツを持つ人々の人権を守り、共に生きていく制度へ抜本的に改めることが必要です。       (伊藤幸)

 

 

2024年6月16日付「しんぶん赤旗」より

 

 

在日本の外国人市民を治安の対象とする排外主義思想は、日本国民の持っている過去の歴史による「最大の負の遺産」と呼ばれるものであると思われます。それが最も最悪の事例で現れたのが、関東大震災時に多くの在日チョソン人が虐殺されたことでしょう。しかしそのことに目をつぶり、知らないように振るまう日本国民の多いことに、恐ろしさすら感じます。

 

幸い、阪神淡路大震災の時にはそうしたことは起こりませんでした。日本国民も時代と共に幾分かは利口になったようです。