【カイロ=秋山豊】イスラエルがパレスチナ自治区ガザ南部ラファに地上軍を侵攻させる準備を進めているなか、エジプトはガザの住民の国内流入を断固として拒否する構えを示しています。

 

イスラエルのネタニヤフ首相はイスラム組織ハマスと戦闘休止で合意するかどうかにかかわらずラファのへの地上侵攻を行う考えを示しています。ハマスの大隊を破壊すると主張しています。ガザの人口は約230万人ですが、ラファにはガザ各地で家を追われた住民を噴き目約150万人が身を寄せていると言われます。

 

エジプト政府はガザの住民の同国内への強制移住は「越えてはならない一線」と位置づけています。イスラエルによるパレスチナ占領終結と、独立国家樹立実現の目標を破壊することにつながりかねないと主張してきました。

 

エジプトは、ハマスとイスラエルの仲介努力を強めてきました。一方で、エジプトはイスラエルに対し、ガザの住民が国内に流入すれば両国関係が「決裂」する可能性があると警告していると報じられています。

 

エジプトはガザと境界を接するシナイ半島北東部に約40台の戦車と装甲兵員輸送車を配置したと言われています。同国はガザの住民が越境した場合に収容できる地帯を境界付近に設置しているとも伝えられています。

 

エジプト日本科学技術大学のサイド・サテク教授(平和学)はハマスのメンバーが同国内に逃げてくれば、エジプト領内がパレスチナ問題をめぐるイスラエルとの紛争の最前線になりかねないと述べます。同時にハマスのメンバーが「エジプト国内の治安と安定を損なう可能性もある」と考えています。

 

ハマスは1987年、パレスチナでイスラエルの占領に投石などで抗議する民衆蜂起が起きている最中に、エジプトのイスラム組織ムスリム同胞団を母体に創設されました。シシ大統領が率いるエジプト政府はムスリム同胞団をテロリストとみなしています。

 

エジプトでは2012年、ムスリム同胞団のモルシ氏が大統領に就任しましたが、イスラム色の強い憲法制定に国民が怒り、デモが発生。シシ氏がトップを務めていた軍がモルシ氏を解任しました。

 

前出のサデク氏は「エジプトはシリアやスーダンなどから多くの難民を受け入れてきた。しかし、(パレスチナから)たとえハマスのメンバーが国内に入ってこなくても、イスラエルに強い復讐心を抱き、政治色を強めた人々がガザから流入することは危険だ」と語りました。

 

 

2024年5月7日付「しんぶん赤旗」より

 

 

エジプトとしては、イスラエルに憎しみを抱いたパレスチナ難民が、国内に入ってくれば、イスラエル政府を刺激してエジプト国内にイスラエルの攻撃が及ぶのではないか。そのことを心配しているのでしょう。

 

対応を誤れば、イスラム教徒同士の戦闘が発生する可能性をはらんでいます。