文部科学省は22日までに、2025年度から中学校で使用される教科書の検定で、合否決定が「未了」となっていた2゛を合格にしたと発表しました。2点はいずれも作家の武田恒泰市が代表取締役を務める「令和書籍」の歴史教科書です。

 

合格した同社の教科書は2点ともほぼ同じ内容で、巻末資料などを含めるとそれぞれ500㌻を超えます。他の中学歴史教科書が多くても300㌻程度なのに比べ防大な分量です。

 

原始時代を扱う第1章は『古事記』に関する記述から始まり、「国生み神話」を掲載。前編を通じて天皇に関する記述が多いなど、中学校の歴史教科書としては特異な内容になっています。

 

日本の侵略戦争について「快進撃」と表現するなど美化しています。また、日本軍「慰安婦」に関連して「日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はなく」などとと書いています。

 

同社は18年度に初めて中学歴史教科書を検定申請しましたが、合否が決まる前に取り下げました。その後も3回申請しましたが、いずれも不合格になっていました。

 

文科省によると、教科書検定の申請者は、結果の公表まで申請したこと自体も含め検定に関する情報を外部に漏らすことが禁じられています。令和書籍については結果公表前に当該図書が申請されていることなどが外部に漏れていることが分かり、同省は合否の決定を未了としていました。検証の結果、令和書籍側が情報を漏らしたことはなく、検定審査会の審議に重大な影響を及ぼした事実もないとして、19日に合格の決定をしました。

 

 

2024年4月23日付「しんぶん赤旗」より

 

 

武田恒泰氏が代表取締役なら、この会社の歴史教科書の大体の内容は想像がつくというものです。とりわけ近現代の記述はかつての「文部省」が定めた歴史教科書を彷彿とさせる内容になっているのでしょう。

 

神話が取り上げられているようですが、「日本神話」と呼ばれるものは、極めて奈良時代の政治的なイデオロギーに染まった内容なのです。歴史教科書で「国生み神話」など、ヤマト王権が出雲国を屈服させて自身の属国とした事実を反映したものです。ヤマト王権が出雲を取り込んだのは意外に遅く、だいたい6世紀中頃とされているのです、だからこそ「国生み神話」を歴史の企業で教えるとしたら、このヤマトと出雲の歴史を教えるべきでしょう。

 

「日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はなく」とわざわざ書く必要があるのでしょうか。このこと自体、この教科書が持っている性格を物語っています。この記述は日本の戦争犯罪を覆い隠し、さらには否定する役割をもっていると言わざるを得ません。

ここには日本の戦争責任や「人道に反する罪」を否定する内容だと思います。