書架を整理していたら、大学卒業時の「卒業論文」が出てきました。47年前に書かれています。

 

タイトルは「唐代密教史の考察ー特に善無畏・金剛智・不空を中心として」です。

 

当時の母校の東洋史専攻の人間は、ほとんど中国史に関する論文を書いていたように思いますが、私は若干インドも関連した内容となっています。書庫にこもって書き上げた記憶があります。

 

この3人は8世紀に唐の宮殿で活躍したインド出身の密教僧です。特に不空金剛の孫弟子には空海がいるので、日本の真言宗と関連があります。不空の弟子に空海の伝記を読むと、必ず名前が出てくる恵果阿闍梨が唐での空海の師になります。

 

帰国した空海は、平安時代初期の宮廷で活躍して、嵯峨天皇の寵を受けていましたが、今考えると、空海が朝廷に出入りしたのは不空に倣ったものだと思われます。

 

ところで何年か前に、同じ専攻に在籍していて現在では在野の歴史研究家になって、そこそこ知名度がある友人と電話で話したことがあるのですが、彼は「あなたの卒論、すごい内容だったね。この内容だと立命の修士課程どころか京大の博士課程もいけるよ」と激賞されたのです。お世辞半分としても悪い気はしませんでした。しかし分からないのは、いつ、どこで私の卒論に目を通したのでしょうか。彼に自分の卒論を見せた記憶はないのです。卒業してから何十年後に、こうした内容の電話があったことも不思議です。まさか大学在籍時に大学当局が私の卒論をコピーしていたこともないと思います。

 

私が忘れているだけで、彼に貸したのかも知れません。