野村総合研究所『2010年の日本―雇用社会から起業社会へ』(東洋経済新報社、2005年)を読みました。
いちおう院修了後は、シンクタンク・コンサル系の仕事に就くことを多少考えているので、
「社会に対してシンクタンクがどんなことを提言しているのか」を知るために読みました。
この本も先日紹介した本と同様、軽めの文体なので非常に読みやすいと思います。

基本的には、副題となっている「雇用社会から起業社会へ」という論点を中心に扱います。
ここでいう「起業社会」というのは、みんながみんな起業することを目指しているわけではなく、
たとえ組織内であっても、その内部にいる構成員のモチベーションを高め、
組織の活力を高めるという手法も含めて位置づけられています。
このモチベーションを高めるのに、金銭による報酬だけでなく、
専門的知識・技術を得られるか、職務裁量の広狭などをあげて考察していました。
やはり働く人の欲求がどんどん高次の段階に移行していることは確かなようです。

あとは、団塊の世代の大量退職以降の動向なども。
団塊世代による起業や団塊世代をターゲットにした新たな産業の出現などをあげてました。

わたしの専攻との関連でいくと、4章「社会資本の創造的破壊」がおもしろかったですね。
人口減少のなかでこれ以上の社会資本整備が必要なのか、そしてそもそも可能なのかという話です。
「減築」ということばが最近少しずつ聞かれるようになってきました。
これから社会資本関係の財政は、維持管理コスト・そして資本の更新コストとの戦いになります。
つまり、こういったコストを減らすために、社会資本を「あえて取り壊す」という概念です。
コンパクトシティ構想などもこの「減築」の概念を取り入れています。
また「コンバージョン」にも「減築」と似たような政策効果が期待されています。
これは、ニーズに合わなくなった資本を他の用途に変更するという意味ですね。
「商業ビルのニーズが減少してきたので、コンバージョンしてマンションにする」などと使われます。
この本では、金沢市の補助金の例が少し紹介されていました。

なかなか意欲的な提言を出していますし、労働政策などに興味があれば読む価値はありそうです。