毎日暑い日が続いている。
炎天下待ち続けたバスに乗ってホッと一息。
と思いきや、聞こえてくる「ハックッション!」
それも、たて続けに…
どうやら、一人のおじいさんのくしゃみが止まらないようだ。
「ハ、八ックション!」
「ハ、八ックション!」
「ハ、八ックション!」
いっしょにおつゆも飛んでいそう。

さすがにこのおじいさんも止めなきゃいけないと思ったのか、右手のタオルで汗を拭き拭き、左手でモソモソとズボンのポケットに手を突っ込んだ。

でも、そのポケットから次から次から出てきたのは、なんかのカードとか、なんかの紙切れとか…
 その間もずっと
 「ハ、八ックション!」「ハ、八ッ クション!」  あせるおじいさん!
やっと出てきた、道でもらったらしいティッシュ、そのティッシュの中身を出そうとするのだけれど、今度は右手に持ってたタオルが手にまとわりついて取れない。
 「ハ、八ックション!」「ハ、八ックション!」
  またまたあせるおじいさん!

タオルを払いのけ、やっと右手の自由を取り戻し、おじいさんは無事鼻をかめた。

それからのバスの中は、何事も無かったかのように冷房のきいた静かな空間になった。