新聞に「京都の音というと何か?」という問いの答えで一番多かったのが、祇園囃子だという。
東京を始め、地方の人にとって、京都の音は、祇園囃子、お寺の鐘の音らしい。
 うーーん、京都人のわたしからみれば、祇園囃子は
夏が近いことを教えてくれる音。お囃子の稽古の音が聞こえてくると、「もう祇園さんかあ、また暑い暑い日ぃがくるんやなあ」と思う。お寺の鐘の音は、常日頃から聞こえてくる。普通や。
 そうすると、わたしの思う京都の音は、何か?
それは、
托鉢のお坊様の「おーーー」という声だ。京都の細かい路地を、何人かで、先を行く人を探すかのように、「おーーー」と声をかけながら、寒い日も暑い日も、歩いて行かれる。
幼いころ、「お母ちゃん、おーやさんがきゃはったえ」と母を呼び、家の前に出て、何がしかのお金を包んで前にかけている袋?のなかに入れる。深々と頭を下げてくださる。(「おーやさん」とは、失礼なことだ、今から思うと。商売やないっちゅうねん)
 時々、若い僧なのか、本当に道に迷ったのか、一人の心細そうな声が聞こえてくることがある。そんなときは、「無事にお仲間に会えますように」とそっと祈ってしまう。
 こんなの京都以外にもあるのかなあ?