これを書き始めてから約2ヶ月…入院やスマホを長く見れないなど制約のある中でようやく書きあがりました(泣)


8/26の公開から7週間。

興行収入が145億を超え、先行でアメリカで公開され、次いで日本、先日韓国でも公開され、世界89ヶ国で公開が決まっており、世代を超えて一大ブームとなっている「君の名は。」

興行収入では、アニメーション歴代第5位、映画全体でも11位に付けるほどのメガヒットにまでなっており、なお記録を更新中です。

新海誠監督の最大にして最高のアニメーション映画となりました。
予てから新海監督の作品はその映像美が評価されて来ました。

「ほしのこえ」(2002)



「雲の向こう、約束の場所」(2004)



「秒速5センチメートル」(2007)


「星を追う子供」(2011)


「言の葉の庭」(2013)


「彼女と彼女の猫」(1999年短編を2016アニメ化)



「君の名は。」(2016)


私は、8/27に初回を青空エールとセットで観に行ったのですが・・・ヤバいくらいどハマりしてしまいました。

新海監督の作品だから綺麗な映像と深いストーリー作品だろうという気持ちはったのですが、予備知識を持たずに観たことで、前半と後半からのギャップに引き込まれ、そして後半に入るとぞわぞわと鳥肌が立ち、あまりの展開に少なからず衝撃を受け、そして泣きました。

やられました。

前週に青空エール初回を観に行ったときに入手したフライヤーから、ありがちな男女の心と体の入れ替わりもの、くらいの認識しかありませんでした。


実際、冒頭のシーンは初見だけではその意味を認識できなかった人もいると思いますが、2回観ると冒頭のシーンとラストシーンの結びつきに気がつくはずです。


そして、にわかにはわかり難い時間軸のズレ、場面の切り替えの「新海マジック」、壮大なストーリー、本物以上に美しい映像美・・・


前半は高校生の男子と女子の入れ替わりでコミカルに進みます・・・

後半に入ると、一転、事態はとんでもない方向へ突き進み、大きな時間軸のズレが判明します。

こうして、この作品はあっという間に人々を捉えて離さない作品になりました。
ロングヒットを続けている現在、ほとんどの方がリピーターではないでしょうか。


そう・・・私も瀧と三葉に恋をしました。


新海誠監督の過去作はいずれもその映像美が評価されて来ました。


私が観たのは「秒速5センチメートル」でしたが、もう9年前ですね。
まだ私も大学生でした。

そのストーリーの切なさと映像美に感動しました。

でも、「君の名は。」のラストを彷彿とさせる描写があるのですが・・・真逆の結末で、まだ若かった私は少なからずショックを受けたのを覚えています。

また、フォロワーさんに勧められてその後の作品「言の葉の庭」も見ました。

こちらも映像の美しい、特に雨の描写の美しい切ないストーリーとなっています。

なお、この言の葉の庭に出てくるヒロインが「君の名は。」の冒頭に出ているのです!

おわかりですか?

「言の葉の庭」も見たくなりませんか?


そして、新海監督の作品を通してみると気づかされます。
新海監督の作品はいずれも「距離の隔たり」と「時間」が大きくかかわっていることに。

その隔たりゆえに、言い様のない切なさやもどかしさを生む作品となっていたのです。

以下、ネタバレありますので、未見の人は読まないでください。
映画を見た人のみ、読んでください。


そう、「君の名は。」で初めてハッピーエンドになったのです。

それも大ヒットになった要因の一つではないでしょうか。

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飛騨地方の糸守町は、1200年ごとに彗星が落下する不思議な町だったのです。

しかも、彗星の核が2つに割れて、片割れが落下するという・・・

それは、御神体の祠の天井に描かれている壁画からもわかります。

「かたわれ時」という言葉は、片割れ時・・・つまり、彗星が分かれて落下する時間帯であることが推測されます。

三葉と四葉が神社の儀式で舞う神楽は、彗星が2つに分かれることを示した舞であること。

映画を見た人なら覚えていらっしゃるでしょうか。

三葉と四葉が左右上から下へ流れるように舞う神楽・・・あれは、彗星が分かれて落下することを示しています。

そして、御神体に奉納される口噛み酒が
ムスビとして後世に言い伝えられてきた言葉は、すでに2回の彗星落下を受けて、同じように時間軸の違う人との入れ替わりがあったことを暗示しています。


1回目はご神体のある山の頂上

2回目が糸守湖が出来た時

そして、3回目


より集まって、形を作って、捻れて絡まって、時には戻って、また繋がって・・・それがムスビ、それが時間


つまり、代々宮水家の人間は入れ替わりが頻繁に起こってきたこと暗示しています。
その度に誰かと入れ替わって、糸守の人を守り、町を復興させてきたのです。

タイムリープを含んだSF作品であると言えるかも知れません。

瀧がタイムマシンならぬ、口噛み酒によって3年前の彗星落下の日にタイムリープし、糸守町を救うという。

それと、RADWIMPSの歌が主題歌やエンディングだけでなく、映画の枢軸にどんといることも非常に大きい効果を呼びました。

それぞれ重要な部分にドンピシャの歌が流れ、シーンをより印象深く植え付けているのです。

「夢灯籠」然り、

「前前前世」然り、

「スパークル」然り、

「なんでもないや」然りです。

タイミングの良さはもう芸術的と言っていいでしょう。
BGMではなく、歌でなければそれぞれのシーンが生きないのです。


入れ替わりが始まり、それがわかった主人公たちが約束事などを決めていくコミカルな過程は、前前前世にピッタリです。


そして、後半に入り、入れ替わりが途絶えたことの不思議が実は必然的なものであったと気づかされた時の衝撃は鳥肌ものです。

この辺は一度見ただけではわからないかも知れません。

あの日、瀧の体で奥寺ミキと翌日のデートにこぎつけ自分でも楽しみにしていた三葉でしたが、瀧は瀧として、三葉は三葉として目を覚まします。
そう、デートの当日は、3年前の隕石落下の日。10月4日なのです。

つまり、入れ替わりが起きてはいけない日なのです。

三葉はこの日、命が無くなる日だからです。

瀧が、散々に終わったデート後に三葉に電話をかけますが、繋がりません。
いえ、繋がるはずはないのです。

その時間、すでに三葉はいないのですから。
そもそも、3年前の人に電話をして繋がるのか、という問題もありますが・・

同じ理由で、三葉が瀧に会いに東京へ来て電話を二度しますが、この時瀧は中学生であり、携帯を持ってはいなかったのではないかと推測できます。

この時のアナウンスがいずれも「おかけになった電話は電波の届かないところか電源が入っていない・・」

と流れるので観ている人にはもどかしさ、悲しさが募るのです。

「おかけになった電話番号は現在使われておりません」

となれば、ある意味決定的ですが、敢えてそうはしなかった・・・


そして、入れ替わりが途絶えた後も、瀧は糸守の景色を描き続け、それまで描きためた糸守町の風景画を頼りに三葉に会いに行くことを決意します。

そこに司と奥寺ミキが加わり、瀧は邪魔に思いますが、実は二人がいたことで瀧は3年前の出来事に向き合えたとも言えます。

あの、ラーメン屋に入らなければ、糸守町の手がかりは掴めていなかったのですから。

そして、まず第一義の歴史を目の当たりにして、瀧は呆然とします。
町の図書館で司に事件の詳細を知らされ、そして「犠牲者名簿」に決定的な名前を見つけます。

それでも瀧は、次第に薄れていく記憶の中で、なんとか御神体のある場所を思い出します。
ここでも、あの口噛み酒を御神体に奉納したのが自分が三葉になっていたからこそ思い出せたのです。

つまり、あの時の入れ替わりも必然だったわけです。

こうして、後から伏線を拾ってゆく・・・この映画は、二度、三度と観ないとトリックに気づかないように作られているのです。

物語の後半、かたわれ時で初めて瀧が瀧として、三葉が三葉として出会ったシーンは本当に感激です。

御神体がある場所のカルデラの頂上。
お互い声が聞こえるのに姿が見えない。
そして、すれ違ったことにお互い気づきます。

瀧くん、そこに・・・

・・・いるのか?

お互い手を伸ばしますが、触れることなく空を切ります。

そして、かたわれ時を迎え、声が合わさります。

かたわれ時だ

遂に二人はお互いの姿を捉えます。
瀧は瀧として、三葉は三葉として


瀧は優しく微笑み、呼び掛けます。

三葉

瀧くん?瀧くん?
瀧くんがいる・・・瀧くん

涙でくしゃくしゃになる三葉。
もう、感動的でもらい泣きです(泣)

そして、かたわれ時の終了でその短い再会はあっけなく終わります。

瀧の言葉が更に涙を誘います。

本当は言おうと思ってたんだ。お前が世界のどこにいても、必ず会いに行くって

ここで流れる「スパークル」のイントロからのメロディが泣かせます。

かたわれ時の終わりと共にお互いの名前も忘れていく・・・

俺はどうしてここに来た!
あいつに会うために来た!
助けるために来た!
生きていて欲しかった!
誰だ、誰だ、誰だ、誰に会いに来た?
大事な人!
忘れたくない人!
忘れちゃだめな人!
誰だ、誰だ、誰だ!
名前は!!!


瀧に託された使命を守るべく走る三葉も記憶が薄れていきます。

ねぇ、あなたは誰?
誰、誰?あの人は誰?
大事な人!
忘れちゃだめな人!
忘れたくなかった人!
誰、誰?君は誰?
君の、名前は!!


そして、走る途中で道の段差に躓いて倒れ込み、そのままゴロゴロと坂道を転がり、更に段差で体がバウンドして地面に叩きつけられます。

その時に、思い出したのは

目が覚めても忘れないようにさ、名前書いとこうぜ



かたわれ時が終わる直前、瀧に言われた言葉が甦ります。

そして、瀧が書いた右手のひらを広げると、そこには・・・


すきだ


という言葉。

スパークルが絶妙に合わさります。

これじゃ、名前わかんないよ・・・


三葉は泣きながらその右手を左手で握りしめます。

そして、意を決してまた走り始める三葉


こうして、新たな時間軸が発生したのです。

歴史は塗り代わり、瀧も三葉も同じ時間軸で生きていきます。

ふとした瞬間瞬間に瀧と三葉は同じ東京で度々すれ違います。

電車のホームで
歩道橋の上で

でも、それが瀧の心を強く深く動かしていたのです。

遂に二人は平行する電車でお互いを見つけ、取り憑かれたようにお互いを求め、町中を走り回り、聖地巡礼として一躍有名になった東京四谷の須賀神社そばの階段の上と下で巡り会うのです。

それでも、何も言えずに階段をすれ違います。
お互い声をかけたいのに・・・

階段を上りきる寸前で瀧はやっと声をかけます。

あの・・・俺、君をどこかで

その言葉にハッとする三葉。
そして、三葉も涙を流しながらにっこりと笑います。

わたしも・・・

笑顔と涙でくしゃくしゃになった顔は、あのかたわれ時で初めてお互いが出会えた時の三葉の笑顔そのままでした。

成長して大人になった三葉ですが、この時の笑顔はあの時のまま。

そして、同時に声をかけます。

君の名は


ここで映画は終わります。
当然、この先はみなさんの予想通りの未来が待ち構えていることでしょう。


三葉と瀧の年齢を改めておきたいと思います。

夢の中では同い年の17歳。

しかし、3年の開きがあるので、三葉が17歳の時、瀧はまだ中学生の14歳。

その後、糸守へ向かい瀧が彗星落下の事実を知ったのは17歳でした。

その時に「3年前に彗星が落下した」ということを知ります。
三葉は生きていれば20歳のはずです。

先輩と再会した時、糸守へ行ったことに瀧は「5年前」と答えています。
つまり、就職活動を行っている時、瀧は22歳。

歴史が塗り替わって三葉も同じ時間軸を生きているなら、三葉は3年先輩の25歳となります。

そして、年が変わり就職した年の瀧は23歳に、三葉は26歳になる、ということになります。

三葉は年上のお姉さんというわけです♪

この種のSFにはいくつかの不文律があります。
この作品の場合は、「歴史が塗り替わった場合、それ以降も自動修正される」というものです。


本来、タイムマシンは存在しません。
過去には戻れないからです。

「過去は変えてはならない」という大きな不文律が先ずあります。

そのおかげで、過去に戻ったもののどんな些細な出来事も変えてはならないと奔走する人々をコミカルに描いた作品も多数あります。(STMBなどもそうですね)

また、結局歴史は変えられなかったとする作品もあります。


ただ、アニメやライトノベルなどでは、過去に変わった歴史はその後も不自然なく自動修正される、というものがあります。
歴史が刷り変わる、塗り変わるわけです。


「君の名は。」では実際に、隕石落下という事実は逃れられませんが、住民たちのほとんどが偶然にもその時刻に避難訓練をしていて生きていた、というものです。


本来は、隕石落下を免れず、住民の大半が亡くなってしまったという瀧が突きつけられた事実が第一義的な歴史。


そして、瀧と三葉が協力して10月4日に住民たちを死なせまいと奔走したあの日、町長である父に迫った三葉の本気の目が父親である町長の心を動かして大規模な避難訓練があり、みな無事だったという塗り変わった第二の歴史。

一度は、三葉の体に入った瀧が町長に直談判するも、相手にされず挙げ句に「お前は誰だ」と言われてしまう。
その後の「三葉なら救えたのか」という瀧の件。


ちなみに、劇中のティアマト彗星が落下したのはつい先日の10月4日でした。
Twitterでは、そのことに触れ、「ティアマト彗星」がトレンド入りしました。


そして、またネット上で囁かれていることがあります・・・

最後に、東京で働く人たちが映し出されます。

ごみを出す女性、牛丼屋で牛丼を食べる女性、コンビニで働く男性、不動産の広告を見る男女2人連れ、そして最後に教室の窓の外を見る少女・・・

その人々は糸守で生き残った人々である、と言うのです。

不動産屋で広告を見ていた2人連れは、てっしーと早耶香、花屋で働いていたのは司、最後に授業中窓の外を眺める眼差しが印象的な少女は・・・。

これは私の想像ですが・・・

最後に教室の窓を見やる瞳が印象的な女子生徒・・・
これは四葉ではないか、と。

ティアマト彗星落下の時は9歳でした。
それから8年経ったら17歳です。
四葉の面影があると思いませんか?


みなさんはどう思われるでしょう・・・