「ありす様、最近メールの返事がそっけないですけど、ご迷惑でした?」
朝の清々しい教室の中で、葬式のような顔をした舞子。
「そんな事ないよ、ぜんぜんメールしてOKだよ!」
舞子のメールは特別面白いものでもないので、普通に返信するんだけど、それが舞子からみるとそっけないものに見えるらしい。
心のどこかで、舞子から離れたいという気持ちがある。それに、大げさに演出するのがめんどう。
必然的に、舞子への返信は簡単なものになってしまいがち。
舞子が落ち込むという光景は目に見えているのだけれど・・・。
「でも、ありす様、最近冷たい・・・」
確かに美術部に行くようになってから、舞子の事を放置しすぎたかもしれないなぁ。
でもなぁ、一緒にいてもあんまり楽しくないというのが現実なのよね。
「舞子が寂しかったら、どんどんメールしていいからさ、ね、大丈夫だよ」
「ありがとうございます、またメールさせてもらいます。」
メールで済むなら楽なもんかな。
その日の昼休み、誰も来ない屋上への階段の踊り場。
私は舞子を抱きしめキスをした。
そのキスは舞子という疫病神を追い払うための、おまじないのようなものだったのかもしれない、愛も恋も含まれていない残酷なキス。
だけど、舞子にとっては、愛の証そのもの、朝の葬式のような表情はどこかへ飛んでいってしまった。
とりあえず、これでしばらく舞子の寂しさをまぎらわす事に成功した。
私は舞子を静観しながら、人の気持ちを踏みにじるような最低な計算をしていた。
放課後、もう条件反射のように美術室へ向かう、舞子は今日のキスが効いたのか、私に軽く挨拶をして早々に帰っていった。いつもこれぐらいだと扱いが楽でいいんだけどなぁ。
美術室に付くとすでに早く来た部員達は絵を描き始めていた、明穂ちゃんもすでに絵を真剣な表情で描いている・・・。なんだろう、前まで芋っぽい子だなって思ってただけなんだけど、彼女の人となりを知ってから、なんとなく気になる。
無意識のうちに明穂ちゃんを視線に入れている自分が気になるようになっていた。
あぁ、ダメダメ、違う女の子に手をだしたらまた舞子が煙を出し始めるもんね、軽々しく行動すると後が大変なんだよね・・・。
「ねぇ、明穂先輩ってどんな人がタイプなんですか?」
なにやら会話が聞こえてきた、どうやら1年生の子が明穂ちゃんと話をしているみたいだ。
「好きなタイプかぁ~年上じゃないとイヤかなぁ~。」
へぇ~明穂ちゃんは年上が好みなのかぁ~、って、私関係ないし・・。それに異性ってうのが前提の話だろうし・・・。
「年上ってそんなの漠然としすぎですよ~もっと具体的なの無いんですかぁ~。」
そうだ、もっと聞け!いつの間にか絵のことなんか忘れていた、明穂ちゃんと話す1年生の子を心の中で応援していた。
「うーん、泣きボクロとかかしら?なんとなく魅力的に感じちゃって・・。」
ま、まさか、私の事じゃないよね、いちおうあるんだけど、右の目の下にぃー!
関係ないけどね・・・。
「泣きボクロって先輩マニアックすぎぃ~!あははは・・・」
その後は1年生の子の愚痴が続き、明穂ちゃんの情報は何も得る事ができなかった・・・。
って、別に情報知りたいなら自分で聞けばいいんだよねぇ。
なんとなく背伸びをして、休憩しがてら、周りの絵を見つつ、結局のところ、絵を描いている明穂ちゃんの後ろに陣取った。
「明穂ちゃんは上手だねぇ~。」
何も気を聞いたこともいえず、いつもと同じようなセリフで彼女を振り向かせる。
「えぇ~私なんてまだまだですよ~。」
うんうん、この謙虚なところが明穂ちゃんらしいんだよね。とりあえず、当たり障りの無い会話でもしましょうかね。
「やっぱり、上達するには絵を長くかかないとダメなのかなぁ~。」
「そうですねぇ、たくさん描けば上達しますよ、学校以外でも塾に通ったり家でも描いてるんですけど、なかなか・・・。」
「え?塾に家でも描いてるの!?」
ど・・・どんだけ、描くんだ・・・。っていうか自分がやったら気が狂いそうだよ。
「あ、でも家で描くときは趣味みたいなもので、マンガっぽいのも描いたりしますよ。」
「へぇ~・・・すごいねぇ~・・。」
もう言葉が続かず、明穂ちゃんもそろそろ続きを描きたそうに筆を持ったので、私は退散することにした。
美術部で絵を描いて、塾で描いて、家で描くか・・・。塾ってことは、ひょっとしたら、そこに他の学校の男子生徒とか来てて、年上の泣きボクロのある人とか、居たりして。
・・・・。何考えてるんだか、別に明穂ちゃんがどんな男と付き合っていようが、自分には関係ないじゃない。
それにもし自分が明穂ちゃんみたいなマジメな子にかかわったら、彼女が可愛そうな気もする、私のヨゴレ人生な人間とは育ちが違うのよね。
きっと恋愛もプラトニックな感じなんだろうなぁ・・・。
肉体関係なんて不純よ、なんてね、そんな子さすがにいまどき居ないよねぇ~。
しかし、この常識を逸脱した学校なら、全くありえなくもないから恐ろしい。
目の前のキャンバスはほぼ真っ白、まだ下書きを終えたところで、これから絵の具を塗り始めるところなんだよね、油絵は塗り重ねてナンボって感じらしいので、塗らなきゃいけないのに、いつ完成するのやら・・・。
無限の徒労を秘めた白いキャンバスが広がる。
嫌な現実から、目を背けるために、ふと斜め前に座っている明穂ちゃんの横顔を見る、その表情は真剣で、適当に絵を描いている自分が情けなく感じられる。
なんだろう、彼女は自分に無いものをたくさん持ってる気がする・・・。
私の心の奥底で、彼女に対する羨望の念がゆっくりと、静かに湧き出るのを感じた。
朝の清々しい教室の中で、葬式のような顔をした舞子。
「そんな事ないよ、ぜんぜんメールしてOKだよ!」
舞子のメールは特別面白いものでもないので、普通に返信するんだけど、それが舞子からみるとそっけないものに見えるらしい。
心のどこかで、舞子から離れたいという気持ちがある。それに、大げさに演出するのがめんどう。
必然的に、舞子への返信は簡単なものになってしまいがち。
舞子が落ち込むという光景は目に見えているのだけれど・・・。
「でも、ありす様、最近冷たい・・・」
確かに美術部に行くようになってから、舞子の事を放置しすぎたかもしれないなぁ。
でもなぁ、一緒にいてもあんまり楽しくないというのが現実なのよね。
「舞子が寂しかったら、どんどんメールしていいからさ、ね、大丈夫だよ」
「ありがとうございます、またメールさせてもらいます。」
メールで済むなら楽なもんかな。
その日の昼休み、誰も来ない屋上への階段の踊り場。
私は舞子を抱きしめキスをした。
そのキスは舞子という疫病神を追い払うための、おまじないのようなものだったのかもしれない、愛も恋も含まれていない残酷なキス。
だけど、舞子にとっては、愛の証そのもの、朝の葬式のような表情はどこかへ飛んでいってしまった。
とりあえず、これでしばらく舞子の寂しさをまぎらわす事に成功した。
私は舞子を静観しながら、人の気持ちを踏みにじるような最低な計算をしていた。
放課後、もう条件反射のように美術室へ向かう、舞子は今日のキスが効いたのか、私に軽く挨拶をして早々に帰っていった。いつもこれぐらいだと扱いが楽でいいんだけどなぁ。
美術室に付くとすでに早く来た部員達は絵を描き始めていた、明穂ちゃんもすでに絵を真剣な表情で描いている・・・。なんだろう、前まで芋っぽい子だなって思ってただけなんだけど、彼女の人となりを知ってから、なんとなく気になる。
無意識のうちに明穂ちゃんを視線に入れている自分が気になるようになっていた。
あぁ、ダメダメ、違う女の子に手をだしたらまた舞子が煙を出し始めるもんね、軽々しく行動すると後が大変なんだよね・・・。
「ねぇ、明穂先輩ってどんな人がタイプなんですか?」
なにやら会話が聞こえてきた、どうやら1年生の子が明穂ちゃんと話をしているみたいだ。
「好きなタイプかぁ~年上じゃないとイヤかなぁ~。」
へぇ~明穂ちゃんは年上が好みなのかぁ~、って、私関係ないし・・。それに異性ってうのが前提の話だろうし・・・。
「年上ってそんなの漠然としすぎですよ~もっと具体的なの無いんですかぁ~。」
そうだ、もっと聞け!いつの間にか絵のことなんか忘れていた、明穂ちゃんと話す1年生の子を心の中で応援していた。
「うーん、泣きボクロとかかしら?なんとなく魅力的に感じちゃって・・。」
ま、まさか、私の事じゃないよね、いちおうあるんだけど、右の目の下にぃー!
関係ないけどね・・・。
「泣きボクロって先輩マニアックすぎぃ~!あははは・・・」
その後は1年生の子の愚痴が続き、明穂ちゃんの情報は何も得る事ができなかった・・・。
って、別に情報知りたいなら自分で聞けばいいんだよねぇ。
なんとなく背伸びをして、休憩しがてら、周りの絵を見つつ、結局のところ、絵を描いている明穂ちゃんの後ろに陣取った。
「明穂ちゃんは上手だねぇ~。」
何も気を聞いたこともいえず、いつもと同じようなセリフで彼女を振り向かせる。
「えぇ~私なんてまだまだですよ~。」
うんうん、この謙虚なところが明穂ちゃんらしいんだよね。とりあえず、当たり障りの無い会話でもしましょうかね。
「やっぱり、上達するには絵を長くかかないとダメなのかなぁ~。」
「そうですねぇ、たくさん描けば上達しますよ、学校以外でも塾に通ったり家でも描いてるんですけど、なかなか・・・。」
「え?塾に家でも描いてるの!?」
ど・・・どんだけ、描くんだ・・・。っていうか自分がやったら気が狂いそうだよ。
「あ、でも家で描くときは趣味みたいなもので、マンガっぽいのも描いたりしますよ。」
「へぇ~・・・すごいねぇ~・・。」
もう言葉が続かず、明穂ちゃんもそろそろ続きを描きたそうに筆を持ったので、私は退散することにした。
美術部で絵を描いて、塾で描いて、家で描くか・・・。塾ってことは、ひょっとしたら、そこに他の学校の男子生徒とか来てて、年上の泣きボクロのある人とか、居たりして。
・・・・。何考えてるんだか、別に明穂ちゃんがどんな男と付き合っていようが、自分には関係ないじゃない。
それにもし自分が明穂ちゃんみたいなマジメな子にかかわったら、彼女が可愛そうな気もする、私のヨゴレ人生な人間とは育ちが違うのよね。
きっと恋愛もプラトニックな感じなんだろうなぁ・・・。
肉体関係なんて不純よ、なんてね、そんな子さすがにいまどき居ないよねぇ~。
しかし、この常識を逸脱した学校なら、全くありえなくもないから恐ろしい。
目の前のキャンバスはほぼ真っ白、まだ下書きを終えたところで、これから絵の具を塗り始めるところなんだよね、油絵は塗り重ねてナンボって感じらしいので、塗らなきゃいけないのに、いつ完成するのやら・・・。
無限の徒労を秘めた白いキャンバスが広がる。
嫌な現実から、目を背けるために、ふと斜め前に座っている明穂ちゃんの横顔を見る、その表情は真剣で、適当に絵を描いている自分が情けなく感じられる。
なんだろう、彼女は自分に無いものをたくさん持ってる気がする・・・。
私の心の奥底で、彼女に対する羨望の念がゆっくりと、静かに湧き出るのを感じた。