あれ以来、舞子との関係は大きくは変わってない。舞子は当たり障りのなく、そして面白みのない話をする、そして、私は適当に相槌をうちうんうん、とうなづきながら聞いている。
そんな毎日が続く。舞子はさぞ幸せな事でしょう、私はそんな幸せそうな舞子を見て自分の心の空虚感をしみじみと感じさせられていた。
学校での連日に及ぶあられもない姿を公表してしまった私は、セックスシンボルのレッテルを貼られてしまい、一部の生徒の間でおもしろおかしく噂にされてしまった。いろんなあだ名もつけられて、露出魔とか、節操なしだとか、ヒドイのだと少女A・・・。Aっていうのはありすの頭文字ってことなんだとおもうけど、私は犯罪者じゃないって・・。
潔癖なお嬢様方は私を汚物のような目でみる、まぁ係わり合いはないから別にいいんだけど。
それよりも困ったのは、。、そういう勘違いをしたレズ願望のある女の子達が私に言い寄ってくるようになってしまった。極めつけは、どこからかメアドが漏れて全く知らない子から謎のメールが何件か来る状態になって、あて先人不明の怪文書ラブメールとか来るし。
「ありす様は私の不思議の国のアリスです♥」って・・・意味わかんないし!
そういった生徒達の対応をするたびに、舞子は不機嫌になって、私の前で何度も泣くようになってしまった。慰めるのにものすごい労力と時間がかかるので、久美ちゃんもろとも、あなた方のお相手はできません宣言をして全員追い払ってなんとか、舞子の平穏を保つようにしたんだよね・・・。
舞子は私をファッションのように考えているんじゃないかと思うことがある、舞子は私と付き合ってる、そう思われたい、それが舞子にとってのステータスになっているように感じた。だから、私の気持ちがどんな状況であっても、とにかく舞子は私をそばにおいておくために、あらゆる手段をとっているような気がする。
舞子はそれで満足だろうけど・・・・。私はもう疲れちゃったよホント・・。
6月に入り、梅雨時の湿った空気が漂う、今にも雨の降りそうな灰色の雲に覆われた空を見ながら、昼休みの廊下を一人で歩く。
私に付いてこようとする舞子を適当な理由で引き離し、一人の時間を満喫していた、何かするわけでもなく、人の少ないほうへと足が進む。無意識のうちに噂にされたり、人の話題のネタにされるのを恐れたいたのかもしれない。
パックジュース片手にぶらついていると、目の前に学生が増え始めた、歩いているうちに、一年生の教室の前まで来てしまったみたい、慌てて逃げるように回れ右をする。
「なんだ、ありす、一年生を手篭めにしに来たのかぁ?」
目の前に突然現れたのは、担任の板倉先生だ、いまどきあまり見ないグラデーションがかった色つきの眼鏡に刈り上げた角刈り、メタボ体型のクマのような外見。オッサンオブオッサンって感じなので、あまり生徒からは好かれてはいない。
「先生までそういう事言わないでくださいよ。不登校になりますよぉ~。」
「お前が不登校になるわけねーだろ。」
相変わらず口の悪い先生だ、生徒指導の先生でもあるので、これぐらい粗暴な感じのほうがちょうどいいのかな、生徒になめられないように・・・。
お上品な先生とは違って、こういうタイプの先生のほうが、私としては話しやすいんだけどね。他の生徒からは見た目の威圧感から距離をおかれてるみたいだけど。
「そうだお前、明日の放課後ヒマか?」
お気楽そうに笑顔で聞いてくる。どうせお前ヒマなんだろうという表情が気に食わないなぁ。
「先生ぇ~生徒に手を出すつもりですかぁ?先生のほうが不登校になっちゃいますね♪あははは・・。」
「ば、ばかやろう、そんな事するわけないだろう!」
バカとか言いながら嬉しそうで、先生は照れた表情を見せ、私の頭をやさしく手でポンと押す。若い女の子に相手にされないタイプのオッサンって、私の手のひらで踊ってくれるのでこっちも嫌な気分はしないのよね。
「じゃぁ、これぐらいなら考えてもいいよ~。」
私は薄ら笑いをしながら指を5本立てた。
3年生と先生が楽しそうに廊下で長話をしている、そんな姿をまわりの1年生達が不思議そうな目で眺めている。そんな視線に気づいた先生が慌て始める。
「で、ヒマなのかどっちなんだよ。あまり先生をいじめるな。」
「あはは、いいですよ先生、そうですね~。これぐらいの報酬はいただけます?」
私は手に持ったパックジュースを手でふりふりと振って見せびらかす。
「ったく、しょうがないな、すっぽかすなよ。」
不満そうな言葉を残して先生は歩いていった、でもその背中はどこか嬉しそうだった。
あ、そういえば、放課後に何のようなんだろう、私は一番大切な部分を聞くのを忘れてしまった。まぁ、どうせたいした用事じゃないよね・・・。