今更にかすかに思い出す色といえば、



気の遠くなるほどに透明な漆黒の闇。



煌煌と佇む左舷の月



そしてそこには僕の知らない君の匂いと、



僕の知らない絶対的な安らぎの空気があった。







心地よく流れ続ける草原の風は、



いつやむとも知らぬほどに僕を癒し続けていた。



君は紫紺の纏にその身を抱かれながら、



そしてその足先をゆっくりと僕が立ち尽くす場所へと



はこび続ける。



それはまるで生まれて初めて人を愛した時のような、



何とも言い難い至高の感覚―、



それだけが僕の総てを支配しているかのようだった







愛しさと言ってしまうには



その存在はあまりにも無限すぎて、



そしてそれの総ては紛れもなく



君だけのために存在する唯一無二の色だった。







10と2の波を見つめ続けてきた僕は



今、心から願う。





夢色よ、風の中で 静かに眠れ─。