肝臓がん | 外科医T-bo 消化器がんよろづ通信

外科医T-bo 消化器がんよろづ通信

外科医T-boが、消化器(食道、胃、大腸、肝臓、胆道、膵臓)がんの診断、治療(手術、化学、放射線、免疫、補完代替医療)について情報発信します。

肝臓がんは、厳密には原発性肝細胞がんと胆管細胞がんに分別されます。原発性肝細胞がんはC型肝炎を背景に60%、B型肝炎を背景に10%発症し、ウイルス性肝炎が発がんの最大のリスクファクターです。その他、最近増えてきましたNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)が原因として増えてきています。C型肝炎はインターフェロンから、ハーボニー(商品名)により、かなり制御されてきましたし、B型肝炎も出生時から含め、制御率がかなり高まっており、やがてはウイルス性肝炎からの原発性肝細胞がんの発がん率は消滅に向かうのでは考えます。

胆管細胞がんは、肝臓がんの10%程ですが、なかなか減りそうもありません。
肝臓がんは、ほとんど自覚症状がありません。発見の契機は、ウイル性慢性肝炎、肝硬変での定期的な検査(腹部エコー、AFP、PIVKAIIといった腫瘍マーカー)が大部分を占めています。したがって、ウイルス性肝炎の無い方は、たまたま腹部エコーあるいはCTで偶然に肝腫瘤として指摘されることが多いようです。
原発性肝細胞がんの予後は、肝臓がんの進行度もさることながら、ウイルス性肝炎もしくは肝硬変による肝障害度が深く関与しています。肝臓がんはが、各種治療(肝切除、熱凝固療法、血管内治療、全身化学療法)によって肝がんが治ったとしても、肝障害が進行すれば肝硬変、肝不全となり死に至ります。したがって、肝がんの制御もさることながらウイルス性肝炎の治療も延命を図る重要なポイントとなります。
肝臓がんの治療は、原発性肝細胞がんは多彩(手術、熱凝固療法、血管内治療、化学療法)でありますが、胆管細胞がんは、ほぼ手術のみとなります。胆管細胞がんは、熱凝固療法、血管内治療、化学療法はほとんど効きません。
肝臓がんの手術は、この20-30年でものすごく進歩してきました。30年前は出血との戦いともいひとつは、どれだけ肝臓を切っても大丈夫なの?ということの戦いでした。肝切離の手法がデバイスの発達などにより出血が少なく行われるようになり、どれだか肝臓を切離しても大丈夫なの?という疑問に対しては、肝予備能評価法の確立と術後肝不全予測の確立により安全な肝切離が現代ほぼ確立しています。
日本では肝移植のスタンダードは生体肝移植です。世界で標準的な肝移植が生体肝移植であるのは日本だけです。これは宗教観などもあるかもしれませんが、最大の理由は、ドナーからの肝採取に4000例を超えるまでドナーの死者が出なかったことによるものです。肝切離の手術死亡率は施設間にある程度差がありますが、これはすごいことで、日本の肝切離技術は世界に誇れる冠たるものだと考えます。