雨は,心を解(ほぐ)す。

固い結び目から,ずっと昔に忘れた柔らかな感覚が,「ほろっ」と蘇る。

手のひらで受け止めた"それ"を,そっと包み込めば,隙間から溢れる蛍火のような瞬きが放つ温かさが,指先から両腕を伝(つた)い,心に仄かな焔(あかり)を灯す。

ノスタルジックな焔の揺らぎに身を委ねると,皮膚の外側の世界が,モノクロのスローモーションに変わった。

激しく身体を穿つ大粒の雨が,さざ波のような囁きに変わる頃・・・。
私は,心に宿った焔をもてあまし,不意に寂しくなって,哭きたくなる。

肌を濡らした雨は,私の胸に「哀しみ」という名の涙を滲ませ,素知らぬ顔で夜の彼方へ去っていった。

孤独という煙を燻らせたまま・・・。


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