テイルズオブジアビス | 双炎火のブログ

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テイルズはRPGのなかのRPGだ。これよりすごいRPGはないだろう

                         ~プロローグ~

 床に光り輝く陣――大きな円陣を中心に、その四方にふた周りほど小さな陣を配置した《譜陣》――が描かれた薄暗い巨大な部屋。

 そこに、少女は一人、足音も立てずに足を踏み入れると、陣の前で立ち止まり、昇り立つ輝きにその身を晒した。

 圧力となって肌に感じられる光は、暖かな風となって、マロンペーストを思わせる色の長い髪を揺らす。分けられたその前髪に普段は隠されている右の瞳が覗くと、切れ長のサファイアブルーの瞳の奥には、決意と―いまだ消えぬ迷いがあった。

 だが、もはや消さねばならない。

 できるのは、やるのは自分しかいない、とわかっている。

(それが、せめてもの――)

 少女は、手にした《杖》を二の腕まである手袋をした手で、強く強く握りしめると、ゆっくりと息をはいた。それは、最後に残った迷いを捨てる儀式。硬く。硬く。心を硬く。そうしなければ、きっとできない。

 「さあ・・・・・・いよいよだわ」

 自分に向けて、すべての始まりの鐘を鳴らすように――演奏を始めるべく指揮棒を振り下ろすように、少女は呟いた。

 耳を圧するように雑音が消されるように、迷いが塗りつぶされるように消えていく。だが、杖を握る手袋にはきつく皺が寄って消えることはなかった。

 それでも。たとえ、それでも。

「……いきます」

 酷薄に見えることを自覚している薄い唇をきつく結び、少女は《譜陣》に足を踏み入れた。

 ブーツの底に、輝きが微かに音を立てた。



――歌うように。