- 説経小栗判官 (ちくま文庫)/近藤 ようこ
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都の高貴な家に生まれた
これを知った横山殿は、一計を案じて小栗を呼び酒の場で毒を盛る。
こうして家来ともども毒を盛られて地獄行きとなった小栗だが、家来たちは自分たちの代わりに小栗を娑婆に戻すよう、閻魔大王に願い出る。これに感じた閻魔大王は小栗を現世に戻すのだが、目も見えず耳も聞こえず、ものも言うことのできない変わり果てた姿となる。姿が餓鬼に似ているので「餓鬼阿弥」と呼ばれる。
閻魔大王からのことづてで、この餓鬼阿弥を熊野本宮湯の峰の湯に入れれば元に戻るという。餓鬼阿弥を見つけた藤沢のお上人は、車に乗せて「この者を一引き引いたは千僧供養、二引き引いたは万僧供養」とお引きある。お上人は富士浅間神社まで引いて行き、この後次々と多くの人が代わり代わりに「えいさらえい」と餓鬼阿弥を引いて東海道を上がっていく。
一方、横山殿は照手の姫を相模川の「おりからが淵」に沈めるよう命じる。姫に同情した下僕は、殺さずに海に流す。こうして姫は「ゆきとせが浦」に流れ着き、ここから人買いに次から次へと売られて各国を流れ流れて、美濃の国青墓の宿の「よろづ屋」という遊女屋に買い取られる。
亡き小栗を想う照手の姫は「常陸小萩」と名のり、遊女になれという主人の話を断り、代わりに十六人分の水仕事を一人でさせられることになる。こうしてつらい奉公を三年間なされる。
かくして、東海道を上がってきた餓鬼阿弥を見た常陸小萩は、それが自分の夫であることを知らずに、夫の供養のために主人に五日間の暇を得て餓鬼阿弥を引くことになる。
が、自分の美貌のために人々の好奇の対象となってしまうことに気づいた小萩は、古烏帽子をかむり笹に幣をつけて狂人に装う。
かくして近江の大津関寺まで引いた小萩だが、
ああっ この身が二つあったなら!
一つはよろづ屋へ戻したい!
一つはこの餓鬼阿弥の車を引いてやりたい!
心は二つ 身は一つ…!
と、餓鬼阿弥に名残を惜しむ常陸小萩。
こうしてようやく湯の峰の湯にたどり着いた餓鬼阿弥は、次第に元の姿を取り戻す。
七日入れば両眼が開き
十四日入れば耳が聞こえ
二十一日入れば早くも物を申されます
その後四十九日には六尺二分豊かなる元の小栗殿におなりになります
復活した小栗は、常陸小萩(照手の姫)を迎えに行ってめでたしめでたしとなる。