「ねえ、早く来てよ。」大きな声で嬉奈が言う。「ちょっと待てよ。」とキムタクではなく僕が言い返す。
どうやら嬉奈は昨日、学校の裏山でお菓子の家を見つけたらしい。
それを見せるために彼女は僕を呼んだのだ。
お菓子の家に行くというのは「ヘンゼルとグレーテル」のようである。
僕はその作品のようにパンを道に置きながら目的地へ向かっているのだが、、、
僕はフランスパンを持ってきてしまった。
僕の貧弱な握力ではフランスパンをちぎるのには時間がかかる。
嬉奈が怒るのにも無理はない。
たかが200m進むために、45分もかかっているのだから。
やっとの思いでお菓子の家に着いた。
所要時間は3時間と42分である。
僕は手がパンパンである。
(フランスパンだけに)
疲弊した2人はお菓子の家を見て、はしゃぐこともなく、家に入り、一直線にリビングに向かい、座り込んだ。
続く