パンター戦車の操向装置(その2)
記述間違い!!!
正しくは→準備中
さて、グーグルさんの和訳は結構いい線いっているが、分かりやすく意訳してみる。
意訳(オレ風)
操向装置は、主駆動用ベベルギヤ(傘歯車)、二組の遊星歯車機構、駆動制御用ベベルギヤ、対のスパーギヤ(平歯車)2組そして制御クラッチを持つ2組のステアリングブレーキ(操向ブレーキ)から構成される。遊星歯車機構の中心にあるサンギヤ(太陽歯車)はステアリングブレーキにより各々もしくは同時に固定できる。急旋回を容易に行うために一旦ステアリングブレーキを開放しクラッチを切ることにより左右の履帯はソリッドブレーキにより停止させることができる。また、ステアリングブレーキを解放することによって、駆動制御用ベベルギアを、ステアリングクラッチおよびスパーギヤを介した駆動制御機構から主駆動機構の回転方向に対向して動かすことができる。これにより履帯は減速し、戦車はすべてのギヤが噛合い単一の半径で旋回する。したがって、「単一半径(シングル・ラディアス)」ステアリングという用語が使用される。
英文も訳者の文も問題は同一のものを別表記してしまっているという事だ。そこで、操向装置の略図のどこが何を表しているのか表してみる。
なお、「gear」の読みが「ギア」か「ギヤ」かであるが、JIS表記での「ギヤ」に統一する。
① 主駆動機構
(primary bevel gear drive:プライマリーベベルギヤドライブ)
「primary bevel gear drive」は「主駆動用傘歯車」となるが、一般的な「主駆動軸」に相当するので「主駆動機構」とした。
【説明】
トランスミッションからの出力を伝えるための駆動主軸を直角に方向変換させるベベルギヤを主とする駆動機構である。赤線が主駆動機構であり、黄線で記した操向変速機(エピサイクリックギヤ)のリングギヤを駆動する「主駆動軸」といえる。
② 操向変速機
(epicyclic gear:エピサイクリックギヤ)
「epicyclic gear」の和訳は「遊星歯車装置(機構)」であるが、構成ギアに「planetely gear(プラネタリーギヤ)」というものがあり、和訳が「遊星歯車」なので混乱する要因になる。そこで、「九七式中戦車取扱保存教程」にはこの遊星歯車機構を使用した操向機構を「操向変速機」と記述してあるのでこれを採用する。
【説明】
赤線が操向変速機であり、駆動主軸からの駆動力を終減速機(final drive:ファイナルドライブ)へ伝え起動輪を駆動する。
リングギヤ(環歯車、内歯車)は主駆動軸から入力を受ける。
プラネタリーギヤ(遊星歯車)はリングギヤ及びサンギヤからの入力を受け終減速機へ出力する操向変速機の出力軸となる。また、緑線で示した主ブレーキ(ソリッドディスクブレーキ)と接合されている。
サンギヤ(太陽歯車)は操向変速機の中心ギヤであり、黄線で示したクラッチ付き操向ブレーキが接合されている。
③ 駆動制御機構
「bevel gear control drive(ベベルギヤコントロールドライブ)」は「駆動制御用傘歯車」と訳せるわけだが、「two spur gear pairs」、つまり2対2組のスパーギヤ(平歯車)と組み合わせ、一つの駆動機構を成すので「駆動制御機構」とした。
トランスミッションからは主駆動のほかに駆動制御のための出力がある。
トランスミッションから入力された駆動力はベベルギヤで90度変換され左右の操向変速機に出力される。
変速操向機へは大小2組のスパーギアのうち大ギアの方が操向用クラッチと接続しており、クラッチが繋がっている通常状態では以下のような駆動系を構成する。
トランスミッション→ベベルギヤ(90度方向変換)→小スパーギヤ→大スパーギヤ(逆回転)→操向用クラッチ→操向変速機のサンギヤ
つまり、クラッチが接続されている通常状態では常に操向変操機に逆回転が掛けられている。これでは操向変速機からの出力が超減速されてしまうのだが、トランスミッションからの出力が主駆動回転とは逆回転であるために操向変速機には常に正回転が加わる。
操向装置の機能
【通常走行時】
主駆動系統は以下の通り
トランスミッションからの出力は主傘歯車で90度方向を変換され、左右の操向変速機のリングギヤを駆動させる。リングギヤ入力による遊星歯車機構の動きは、他のギヤが固定もしくは入力がない限り一体として動くため回転方向及び駆動力は同一であり、ギヤ機構というよりも一つの軸として作動する。つまり、トランスミッションから終減速機まで一体に動く駆動主軸になる。なお、図では分かりやすくするために駆動制御機構が動いていないようになっているが、操向用クラッチが接続された状態なので実際にはすべての系統が一体になって動いている。
制御駆動系統は先に述べた通りトランスミッションからの逆出力を2組のギヤにより正回転を操向変速機のサンギヤに加える。この制御駆動機構があるわけは、おそらくディファレンシャル操向装置の欠点である「地面状況が左右の履帯に与える走行抵抗差による蛇行等」を防止し、安定した直進走行を可能とする補正機構といえる。
次回は【旋回時】の動作だ。