今から6年前、代官山のとある美容室にお世話になっていたのですが、そこで私の髪をカットして下さっていたお姉さんに「面白いから是非読んでみて」と薦められたのが読むきっかけでした。
しかし売っている本屋さんがなく、高円寺をぶらついていた時に、アニマル洋子という古着屋兼古本屋で2冊セット500円という安い値段で売られてたのを見て即買いしました。
しかし、当時は多忙を極めていたうえ、お姉さんが独立してお店を開店するため、地元に戻られてしまったこともあり、ずーっと本棚に飾る羽目になっていた訳です。
そして、今回、一念発起して6年目にしてビニールのカバーを破いたのでした。
大体のあらすじを申し上げますと…
M大学医学部に医師として勤務していた小山内桐人は、阿波地方に伝わる、感染すると犬のような姿と化してしまう原因不明の奇病「モンモウ病」に冒された患者を担当していました。
小山内がその病を、その土地固有の何らかの要因がもとで発症する風土病だという仮説を立てた一方で、上司かつ主治医で、医学界全体で見ても権力者だった竜ヶ浦教授はウイルスによる伝染病だという仮説を持っていました。
竜ヶ浦は近々に日本医師会会長選への立候補を控えており、モンモウ病が伝染病だと結論づけるセンセーショナルな学会発表を行って、会長職を盤石のものにしようとしていました。
それには強固な信念と強い正義感を持ち合わせた桐人の存在が邪魔で仕方ありませんでした。
竜ヶ浦は桐人をモンモウ病が発生した村に送り込み、モンモウ病に感染させ、桐人を伝染病説裏付けの材料にすると同時に、彼を医学界から抹殺することを企てます。
こうして権力闘争に付随する陰謀に巻き込まれた桐人はモンモウ病に罹り、獣同然の姿になってしまいます。
人として認められることなく、世界各地を転々とし、幾度となく死の淵に追いやられ、愛する人たちを次々と失いながらも強く逞しく生きていく桐人の姿に感動を覚えずにはいられませんでした。
元医師の知識と経験に裏打ちされた緻密な分析と、生々しくグロテスクな性描写はともに作品のリアリティを高めますが、面白いのは、前者が手塚治虫のイメージ通りであるのに対し、後者は鉄腕アトムやジャングル大帝から想起されるファンタジックな手塚作品のイメージを見事なまでに瓦解させる点です。
手塚治虫はアーティスト、エンターテイナーである以前に研究者であることがよく分かります。
そして、作品は、主人公が人間の姿を失うことで、人間とって本当に必要なのは、地位や権力という、人間が社会の中で造り上げてきたものではなく、人間の心に本来備わっている愛や慈悲の心であるということを鮮やかに描き出しています。
研究者の素養に加え、優良な思想家の如き高潔な倫理感。
彼は医師を続けていても、大成されていたのではないでしょうか。
竜ヶ浦は近々に日本医師会会長選への立候補を控えており、モンモウ病が伝染病だと結論づけるセンセーショナルな学会発表を行って、会長職を盤石のものにしようとしていました。
それには強固な信念と強い正義感を持ち合わせた桐人の存在が邪魔で仕方ありませんでした。
竜ヶ浦は桐人をモンモウ病が発生した村に送り込み、モンモウ病に感染させ、桐人を伝染病説裏付けの材料にすると同時に、彼を医学界から抹殺することを企てます。
こうして権力闘争に付随する陰謀に巻き込まれた桐人はモンモウ病に罹り、獣同然の姿になってしまいます。
人として認められることなく、世界各地を転々とし、幾度となく死の淵に追いやられ、愛する人たちを次々と失いながらも強く逞しく生きていく桐人の姿に感動を覚えずにはいられませんでした。
元医師の知識と経験に裏打ちされた緻密な分析と、生々しくグロテスクな性描写はともに作品のリアリティを高めますが、面白いのは、前者が手塚治虫のイメージ通りであるのに対し、後者は鉄腕アトムやジャングル大帝から想起されるファンタジックな手塚作品のイメージを見事なまでに瓦解させる点です。
手塚治虫はアーティスト、エンターテイナーである以前に研究者であることがよく分かります。
そして、作品は、主人公が人間の姿を失うことで、人間とって本当に必要なのは、地位や権力という、人間が社会の中で造り上げてきたものではなく、人間の心に本来備わっている愛や慈悲の心であるということを鮮やかに描き出しています。
研究者の素養に加え、優良な思想家の如き高潔な倫理感。
彼は医師を続けていても、大成されていたのではないでしょうか。
