君の笑顔はレインボー!
第1話

ありがちな(でも実際にはほとんどない)物語・・・

佐倉一重(さくらひとえ)
緑川青葉
緑川わかな


その1
 夕方。いま僕、佐倉一重(さくらひとえ)はバス停で雨宿りをしている。
急に雨になったからだ。それまではず~っと晴れていたのに、
暑くてたまらなかったのに、急に雨になった。
ず~っと晴れていたのだから、傘なんて持ってきてる訳がない。
 僕は仕方なく、バス停の待合所で、かれこれ30分くらいボ~ッと雨空を見上げながら
雨宿りをしている。
 まいった…。ずっとここにいるわけにもいかないし、家まで走っていくか…。
しかし家までは走っても40分くらいかかる。
ここで雨が止むのをまつか…?
 でもいつ止むんだ?この雨。やむどころかだんだん強くなっているような気がする…。
と、考えてたら、バスがやってきた。
でもこのバスは僕の家と反対の方向に走っていくので意味無し。
ついてない。なんでこんな事になったんだか…。
そもそも、こんなことになったのは全部アイツが…。


その2
 それは朝10時ごろ。悪友のクッフーに呼び出された。
なんでも暇だから、どこか行こうと。
まあ、暇なのは僕も一緒だから行くことにしたんだけれど、
よりによって、この夏休みに「男2人」で遊園地はいかがなものか。
クッフーはナンパしたかったようだが、大抵はカップルで来てるのでナンパなんて成功するはずがない。
それに僕はナンパなんてしたことがないのだ。
それで2人寂しくしていたら、やつの携帯がなりだした。
電話の相手はバイト先の店長か。
どうやらバイトをサボったようで、携帯に向かって何度も頭を下げていた。
そのあと
「今すぐバイトに出て来い!」
と言われたらしく、奴は僕を置いてバイトに…。
男1人の遊園地…フッ…。
 むなしいので僕も帰路につき、とぼとぼと歩いていたら、雨になった…。
それで今、このバス停で雨宿りをしているのだ…。


その3
かれこれ、雨宿りを始めてから1時間たっただろうか…。
雨は止みそうにない。
…いつまでここにいてもしかたない。走って帰ろう。
「あれぇ?そこにいるの、佐倉クンじゃない?」
その声に振り返ると、Gパンにラフなシャツ、亜麻色の長い髪の綺麗な女性がピンクの傘をさしながら立っていた。
担任の緑川青葉先生だった。
先生は夕飯の買い物帰りらしく、スーパーのポリ袋を持っている。
「あ、先生。…こんにちは」
「はい、こんにちは。どうしたの?こんなところで」
「雨宿りです」
「あまやどり?…もしかして、傘もってないの?」
「はい。降ると思わなかったし」
「だめよ。いつも傘の用意はしないと」
「…そうですね」
「電話して、ご家族に迎えに来てもらえば?」
「今、携帯もってきてないんですよ」
「あらぁ~…」
「急にクッフーに呼び出されたんで」
「ふうん。で、彼は?」
「バイトがあるって先に帰りました」
「ついてないわね~」
「はい」
「…じゃあ、先生の家に来る?この近所だし」
「え?」
「こんなところで雨宿りするよりは良いと思うけど?」
「でも…」
 僕は悩んだ。いくら教師でも、若い女性の家に行くなんて…。なにかあったらどうすんだ!?
 と、モヤモヤしていると…。
「いいからいいから。ほら!」
 先生は僕の腕をひっぱってズルズルと…。


その4
で、ここは先生の住むアパート…。
「ちょ~っと、ちらかってるけど気にしないでね?」
 と言って先生がドアを開ける。
「ただいま~」
「は~い…」
 先生のその声に反応して、だれかがやってくる。
 え?先生、彼氏がいたの?…と思ったら、それは中学生くらいの女の子だった。
「お姉ちゃん、おかえりなさい」
「ただいま~」
 先生は僕に
「妹のわかなよ。よろしくね」
 と、紹介してくれて、
「あ、あの…おねえちゃん?」
「あ、こっちは佐倉一重くん。私のクラスの生徒よ」
 と、彼女に僕の紹介をした。
 …が。
「え?え?それって…?」
「いま、たまたまバス停で雨宿りしてたのを見かけて、拾ってきちゃった♪」
「ひ、拾ってきたって…お姉ちゃん…」
 …僕はノラネコか。あ~あ、妹さんパニックになってないか?
「な~んちゃって」
「なんちゃって…って、お姉ちゃん!?」
 妹さんは、からかわれたのに気付いたらしく抗議を始めた。
「…あれ?先生って、先生と中学生の妹さんの2人暮らしなんですか?」
 …話題を変えようと。僕は先生に尋ねた。
「ん?佐倉君、誰が中学生なの?」
「え?妹さん…」
 僕のその言葉に、姉妹は顔を見合わせた後、先生は大笑いし、妹さんは泣き出しそうになった。
「アハハハハハハハハ~!」
「うう~(泣)」
「え?え?」
 僕はわけわからずオドオド…。
「ち、ちがいます~。私、これでも高2ですぅ~!」
 泣きながら抗議する妹さん。
「え!?それじゃ…僕と、同級生?」
「そ、そうです~…」
 うそ…。同い年には見えない…。
「アハハハハ~。そ、そう見えるよね~。わかな、こどもっぽいし」
「わ、私、…こ、子供じゃないもん~!」
 妹さんは、先生をグーでポカポカ殴る。
 その姿は本当に子供っぽいが、口には出さないでおこう…。
「ああ、ごめん、ごめん」
 そう言いながらも先生は笑顔だ。
「アハハハハハ~」
 ・
 ・
 ・
「…ふう。…この子は、あなたの隣のクラスなのよ?」
 数分後、落ち着いた先生が説明をはじめてくれた。
「え?そうだったの?」
 先生に言われて、まじまじと彼女の顔を見つめる。
 …そう言われれば、どことなく見覚えがあるような…。
「あ…あの…」
 僕がずっと見つめていたので、彼女の顔が真っ赤になってうつむいてしまった。
「あ、ああ、ごめん」
 僕もなんとなく恥ずかしくなって顔を反らした。
「ほらほら、わかなも、そのくらいで真っ赤になってうつむかないの」
「だ……だって~」
「そんなんじゃ、彼氏ができたとき、どうすんの!?」
「ど…ど、どうって~?」
「そんなんじゃ、キスもできないわよ?」
「キ…キキキキ、キス!?そ、そんな…」
 あ~あ、先生の言葉に動揺してるよ…。
 …そうこうしているうちに、雨があがったようだ。
 僕は先生に傘を借り、家路についた。
 まあ、雨宿りのおかげで、先生の(妹さんもいたけど)普段の姿を見れたし、良しとしておこう…。


つづく

次回「わかなちゃん、がんばる」にズ~ムイン!(ないない・・・)