前回の記事「歌詞や曲の著作権 」において、作詞・作曲・編曲をすることで発生する著作権というものが具体的にどういう権利なのか、ということを書きました。



作詞・作曲・編曲をすること発生する権利としては、この著作権の他に、もう一つ著作者人格権というあまり聞きなれない権利が発生します。今回は、この著作者人格権という権利がどういう権利なのか、ということを確認及び整理したいと思います。





著作権というキーワードに比べて、著作者人格権というキーワードは聞きなれないものであるかと思います。しかし、重要な権利ですので、著作権が絡む実務においては、著作権の処理のみならず、この著作者人格権という権利もしっかりと処理しておく必要があるケースが多いです。




重要な権利であるにも関わらず、実務上、私はお客様等から「著作者人格権とはどういう権利なのでしょうか」、「これも権利処理をしなければならないものなのでしょうか」といったことを聞かれることが割とあったりします。





【著作者人格権は公表権・氏名表示権・同一性保持権の集合体】



それでは著作者人格権とはどういう権利かといいますと、公表権・氏名表示権・同一性保持権という三つの権利の集合体になります。著作権法は、根本的な権利である著作権もそうなのですが、複数の権利の集合体を指して「○○権」といった取り扱いをすることが多く、この著作者人格権もそうなります。




著作物を創作すると、著作者は公表権・氏名表示権・同一性保持権という三つの権利(著作者人格権)を取得することになります。よって、作詞や作曲をすると、その作詞者や作曲者は、著作権とはまた別に、歌詞や曲に関する公表権・氏名表示権・同一性保持権(著作者人格権)を取得することになります。




これらの権利、すなわち公表権・氏名表示権・同一性保持権という三つの権利の具体的な内容は、次のとおりとなります(括弧内の条文番号はいずれも著作権法の条文番号となります)。





① 公表権
「著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利」(18条1項)
 平たくいうと、創作した著作物を公表するかどうかということを、その公表方法や公表時期等を含めて決定する事ができる権利です。創作をしたものの、著作者が公表したくないと思えば、この権利に基づき著作物を公表しないということが出来ます。



② 氏名表示権
「著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利」(19条1項)
著作物を公表(発表)する際に、著作者としてどういった名前を表示するか、又はそもそも名前を表示しないか、といったことを決定する事ができる権利です。この権利に基づき、いわゆるペンネームや芸名で表示したり、又は本名で表示したりすることができます。



③ 同一性保持権
「著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利」(20条1項)
権利の内容としては、平たくいうと著作物のタイトルや、著作物の内容を改変・変更・切除されたりすることを禁止することの出来る権利です。



尚、著作者人格権の中で最も争いがおきやすいのがこの同一性保持権だったりします。具体的な事例ですと、彦根市の人気キャラクター「ひこにゃん」の使用方法に関して、彦根市と著作者との間で争われた裁判において、この同一性保持権というものが争点になりました。著作権に含まれる権利のうちの翻案権との関係においても議論になることがあり、何かと議論の余地の多い権利になります。






さて、ここまで書いているうちに割りと長くなってきましたので、今回はここまでにして、次回、具体的な楽曲「HONEY」を題材にしてさらに著作者人格権を考えてみたいと思います。




次回「具体的な楽曲「HONEY」を題材にしてさらに著作者人格権を考える 」につづく



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