前回「書籍等のタイトルの不正使用 ~VOGUE事件 」の続きです。



前回は雑誌等の書籍タイトル名を一部拝借して商品やサービスの名称に使用する行為が不正競争防止法に該当するのかということを検討しました。




今回は、映画・アニメのタイトルについて検討したいと思います。今回の題材事件は「マクロス事件」です。








【マクロス事件】




この事件は、テレビアニメ「超時空要塞マクロス」及びその劇場版である「超時空要塞マクロス 愛おぼえていますか」の著作権を持つ竜の子プロダクションが、この続編にあたる「超時空要塞マクロスⅡ」「マクロスセブン」等を制作したビッグウェスト及び販売を担当したバンダイビジュアルを相手に「マクロス」という名称を勝手に使用したとして不正競争防止法に基づく損害賠償請求を求めて裁判になったものです。





マクロス懐かしいですね。第一回の放送は昭和57年10月3日だそうで、私はこの時2歳ですね。でもって「超時空要塞マクロスⅡ」は生誕10周年企画だったので、ここから20年近く経過して裁判になったというわけですね。




この裁判は東京地裁~東京高裁まで争われましたが、結果としては、原告である竜の子プロダクションが敗訴した形となります。



アニメ・映画のタイトルの使用について、東京地裁の中で以下のように判示しております(東京地裁 平成15年(ワ)第19435号)。




(東京地裁)

「映画の題名は、あくまでも著作物たる映画を特定するものであって、商品やその出所ないし放映・配給事業を行う営業主体を識別する表示として認識されるものではないから、特定の映画が人気を博し、その題名が視聴者等の間で広く知られるようになったとしても、特定の商品や営業主体が周知ないし著名となったと評価することはできない



(東京地裁)

「本件テレビアニメの題名「超時空要塞マクロス」及び本件劇場版アニメの題名「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」は、著作物であるアニメーション映画自体を特定するものであって、商品やその出所ないし放映・配給事業を行う営業主体としての映画製作者等を識別する機能を有するものではないから、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」に該当しない。




このように述べて、アニメや映画のタイトルは不正競争の対象とならない・・・被告であるビッグウェストが「マクロス」の名称を付してアニメ・映画を製作したことは問題がない旨を判示しました。なお、東京高裁においてもこれら東京地裁の判決を支持しております(知財高裁 平成17年(ネ)第10013号)。







【雑感】




個人的に、これは結構思い切った判決なのではないかと考えます。書籍・雑誌のタイトルは不正競争の対象となることが前回紹介した「VOGUE事件」「ELLE事件」等でも確認できますが、アニメ・映画のタイトルは不正競争の対象にならないとされました。




今回の裁判を見る限りでは、「マクロス」という名称を付したアニメや映画を今回の当事者とは全く別の第三者が制作しても問題がないというようにも感じられます(個々のキャラクター絵には著作権があるので、マクロスに登場するキャラクターは使用できないですが。なお、今回の裁判被告ビッグウェストはバンダイビジュアルとともに、原告竜の子プロダクションが全体としての著作権を有するアニメ「超時空要塞マクロス」における原画・動画部分の著作権を有しているため、「超時空要塞マクロス」に登場するキャラクターを用いて続編を作ることについては著作権法の観点からみても特に問題ないと考えます)。





要は「マクロス」という名称が付されているけど、皆様が知っているマクロスとは全く世界観の異なるアニメや映画・・・・




個人的には、こんなの作成されたら十分、不正競争だと思うんですけどね。どうなんでしょうか。ここまで極端な裁判例がないのでなんとも言えないのですが。ただ、少なくともフリーライドの観念は生じると思われますので何らかの法的措置がありえるのではないでしょうか(「マクロスシリーズ」の価値を貶めたことによる民法上の不法行為など)。




続いて、次回は似たような事例としてゲームのタイトルの使用が問題となった事件を取り上げてさらに考察していきたいと思います。(続き:ゲームソフトタイトルの不正使用 ~ファイアーエムブレム事件~




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