Q.ある雑誌等のタイトルと同一名の商品の作成やサービスの提供をすると著作権法違反になりますか。



A.著作権法違反よりも不正競争防止法違反になる可能性が高いです。








ということで、今回はちょっと前の記事「書籍タイトル(題号)の著作権 ~父よ!母よ!事件~ 」の続きにあたります。




書籍等のタイトルを著作権法という観点ではなく、今回は不正競争防止法の観点から考えたいと思います。




不正競争防止法はなんぞやというと・・・Wikipediaでわかりやすくまとめてくれているので、それを引用します



(Wikipedia 不正競争防止法の項)

「競争相手を貶める風評を流したり、商品の形態を真似したり、競争相手の技術を産業スパイによって取得したり、虚偽表示を行ったりするなどの不正な行為や不法行為(民法第709条)が行われるようになると、市場の公正な競争が期待できなくなってしまう。


また、粗悪品や模倣品などが堂々と出回るようになると、消費者も商品を安心して購入することが出来なくなってしまう。以上のように、不正な競争行為が蔓延すると、経済の健全な発展が望めなくなることから、市場における競争が公正に行われるようにすることを目的として、同法が制定されている」




簡単に言うと、市場における競争を公正に行わせるための法律だと言えます。




質問の事例のケースが裁判になったものとして、比較的有名な「VOGUE事件」を今回は取り上げたいと思います(東京地裁 平成15年(ワ)第27434号)。







【VOGUE事件】




この事件は、ファッション雑誌「VOGUE」の発行元が、「ラヴォーグ 南青山」という名称のマンションを分譲している日本の不動産会社を相手取り不正競争防止法に基づく損害賠償請求及びファッション雑誌「VOGUE」のロゴと類似する標章を不動産会社が使用することの差し止めを求めて争われたものです。




問題となっている被告が使用していた標章は


(東京地裁)

「中央より右に大きく横書きで「Vogue」の欧文字を表示し、中央より左に「La」の欧文字と「a」全体を覆いつつ上下に大きく広がる湖様の図形、及びその右下に「MinamiAoyama」の欧文字を「Vogue」の表示部分の10分の1程度の大きさで横書きで付記してなる標章」



イメージとしてはこんな感じでしょうか。



著作権 侵害・違反を考える-lavogue minamiaoyama




実物がないのでなんとも言えないですが・・・








【お互いの標章の類似性】




そして、ファッション誌「VOGUE」のロゴと被告の標章との類似性について以下のように裁判所は判示しました。



原告標章「VOGUE」がファッション雑誌「VOGUE」の題号として、需要者の間に広く認識されていることからすると、被告標章においても「Vogue」の部分は、強い識別力を持つものと認められる。」



「被告標章~(中略)~に接する需要者の注意を特に強く引くのは「Vogue」の部分であり、同標章からは、「ヴォーグ」の称呼も生じ、「VOGUE」誌の観念も生じ得るものである。よって、同標章と原告標章とは、称呼及び観念において同一であり、両者は類似していると認められる。」





として、被告の行為は不正競争防止法に該当し、原告(VOGUEの発行元)の利益を侵害するものであるとして、原告の請求通り、損害賠償請求及び被告標章の使用さし止めが裁判所により認められました。



今回は、被告標章において「VOGUE」の部分がだいぶ強調されている印象になっているのがポイントだと思います。「VOGUE」という名称以外にも何か創作性のある名称を一緒に付していたなら、判決内容は変わっていた可能性があると考えます。





このように、著名な雑誌のタイトルやロゴと類似するものを使用して商品を作成したりサービスを提供すると、不正競争防止法に違反する可能性がございます。




実はこのような事例は結構多く、最近ですとロックバンド「ELLE GARDEN」がファッション雑誌「ELLE」より、ELLE GARDENグッズに「ELLE」の名称が含まれていることについて訴訟を受け、ELLE GARDEN側が敗訴したという事件があります。




とはいえ、今回のような事例で不正競争防止法違反にならなかったケースも実際にあります。それを次回取り上げてさらに今回のような事例について考察したいと思います「映画・アニメのタイトル使用について ~マクロス事件~ 」。




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