Q.ゲームソフトの著作権者は誰になるのでしょうか。



A.基本的にはそのゲームソフトのメーカーが著作権者となります。但し、そのメーカーが外部に委託した部分(音楽やキャラクター等)のみ、委託契約内容によっては外部に著作権が残ることもまれにあります。












今回は、ゲームソフトの著作権者というものについて考察したいと思います。



まあ、普通に考えればゲームソフトの販売元であるゲームメーカーが著作権者である場合が多いです。ドラゴンクエストでいえば「スクウェア・エニックス」という具合に。



とはいえ、1つのゲームを作成する上で様々なクリエイターが絡んできますので、そのあたりを整理したうえで一つ考えてみたいと思います。








著作権 侵害・違反を考える



【ドラゴンクエストⅨを例にとる】




2009年に発売され大ヒットしたドラゴンクエストⅨを例にとりたいと思います。



まず、このゲームソフト自体の著作権者は「スクウェア・エニックス」であることには異論はないと思います。




ここで、権利関係を考察するうえで「著作者」と「著作権者」というのを、ここでは分けて考えたいと思います。




著作者は著作物(ゲーム)を創作した者であり、権利を譲渡したとしても著作者であることには変わりないものであり、それゆえに著作者人格権という権利が著作権を譲渡したとしても著作者に残る形となります。



一方、著作権者とは、一般的に著作者そのものである場合が多いのですが、権利を譲渡された結果著作権者となっている場合も多いので、様々なクリエイターが絡むゲームの著作権を考える上でここは著作者と著作権者とを切り分けて考えるべきだと考えます。




ここで一つ、以前当ブログでも取り上げていた「ときメモ事件からゲームの著作物性を考察 」で触れた、ゲームソフトは映画の著作物と認定されることが多いということも思い出して考えたいと思います。




映画の著作物は、その著作者を「その映画の全体的形成に創作的に寄与した者」と定義していると考えられています。


これをそのままあてこむと、ゲームの著作者は「そのゲームの全体的形成に創作的に寄与した者」となり、ゲームプロデューサー・シナリオライター・キャラクターデザイナー・音楽クリエイター・プログラマー等の方々が著作者にあたると考えられます。











著作権 侵害・違反を考える



【権利処理】




ドラゴンクエストⅨのキャラクターデザイナーは、かの有名な鳥山明氏であり、鳥山明氏がキャラクターを書き起こした時点で、そのキャラクター達の著作者及び著作権者は鳥山明氏となります。



音楽も同様で、音楽制作者のすぎやまこういち氏が楽曲を制作した段階で、ゲームに使われる楽曲の著作者及び著作権者はすぎやまこういち氏となります。




これらは、このようなメジャータイトルのみならず、他のゲームソフトでも同様で、ゲームメーカーからキャラクターデザインや音楽制作を外部に委託するのは通常行われているところでもあります。



では実際にどのように権利処理されているかというと、通常は権利を買い取るような契約となります。もちろん、私はドラゴンクエストⅨの詳細な権利処理内容等の具体的事情は存じ上げませんが、概ね、鳥山明氏が書き起こしたキャラクターに関する著作権をゲームメーカーであるスクウェア・エニックスが買い取るような契約であったと考えられます。




音楽も同様な処理をされる結果、ゲームメーカーがゲーム音楽の著作権を有することになります。



ただ、音楽の場合少し特殊なのが、有名な音楽クリエイターが作成したようなゲーム音楽だと、JASRACに著作権管理を委託することもありますので、この場合、印税収入が発生したら音楽クリエイターに配分されることになります。ですが、ゲーム音楽の場合、実態として全てがJASRACに管理を委託するわけではありません。



少し話はそれますが、JASRACに楽曲の管理を委託するには、楽曲の著作権者が自らJASRACと信託契約を締結して行うか、または音楽出版社を通して行うかということになります。実態としては、音楽出版社を通すケースが多いと思われます。



ドラゴンクエストでいうと、すぎやまこういち氏の楽曲はJASRACに管理委託されていることがJASRACのデータベースでも確認できますが、ゲーム音楽は一般的にはそこまでメジャーではない方・・・フリーランスの方等が楽曲を制作することが多く、この場合はJASRACに管理を委託しない・・・要は、ゲームメーカーで楽曲を管理しているといったことが多いです。全体的な実態としては、ゲームメーカーで楽曲を管理している方が多いのが実情です。



それは、JASRACの楽曲データベースで権利者「ナムコ」「コナミ」等と検索して出てくる楽曲を確認すると「無信託」である楽曲が結構多いことが確認できることからもうかがえます。



また、ゲーム音楽も1人の作曲家だけでなく、複数人で制作する場合があり、あるゲーム音楽において、楽曲毎にJASRAC管理となっているものとゲームメーカーが管理しているものとで分かれていたりして複雑な権利処理になっていることもあります。




このあたりについては、いずれ掘り下げて考察したいと思いますが、今回はここらへんでとどめておきます。



とまあ、だいぶ話はそれてしまいましたが、ゲームのキャラクターや音楽については、基本的にその著作者から著作権を買い取っているので、ゲームメーカーがこれらについても著作権者となっているということです。












【権利買い取りの例外】




ということで、キャラクターや音楽についてはその権利をゲームメーカーが買い取るというのが通常という話をしましたが、これに例外が発生することがまれにあります。



要は、ゲームメーカーが権利を買い取らない場合です。この場合、キャラクター等の作成者に権利が残ったままとなり、ゲームメーカーはそれらキャラクター等の作成者から利用許諾を得たうえでゲームに利用するという形になります。



これは大変珍しいケースですが、まれに存在したりします。しかしこのような処理をすると、後日、それらのキャラクターを使用してグッズを制作した時などに揉めることがあり、場合によっては販売差し止め請求等をキャラクター等の著作権者から受ける可能性もあるため、大変危険な処理といえるので、やはり権利買い取り契約が最も望ましいと考えます。




ということで、今回の話は、長くなってしまいそうなので、次回またこの続きを書きたいと思います。









その他著作権事例Q&A