「リーダーシップ」と「マネジメント」

これら二語は、ビジネスの場面で頻出の言葉でありながら、

それらの違いが明確に区分されることなく、しばしば混同されて使用される場合が多い。

 

ではリーダーシップとマネジメントにはどのような意味の違いがあるのか?

また何故両語は混同されたまま使用されることが多いのか?

 

これらのことを理解することは、

両語に対する本質的な理解を深める上で大変役立ちます。

 

リーダーシップとマネジメントの違いを明らかにするために、

一つの例を元にリーダーシップとマネジメントそれぞれの意味から確認することにしましょう。

 

 

まずはリーダーシップからです。

例えば、まだどこにも行く場所を決めていない集団がいたとします。

その中に「山へ登ろう」と言い出した人が現れました。この点がリーダーシップを理解する上での分岐点となりますが、「山へ登ろう」と発案した人にリーダーシップがあるかどうかは、この時点では「まだわからない」と言えます。

 

この人は身振り手振りで熱心に山の楽しさや魅力を語り、山へ行くことを皆へ働きかけた結果、そこにいる集団全員が山へ行きたいと盛り上がり、全員で山へ登ることが決まりました。

この段階ではじめて「山へ登ろう」と言い出した人には「リーダーシップがある」と言えることになります。

 

つまり、リーダーシップとは

その人の熱意や人間的魅力、或いは行動力や説得力等々を通じて複数の他者の意志を一つにまとめて皆を同じ方向へと向かわすことができること、なのです。

また、そうした他者の意志をまとめて一つの方向へ導くことができる力を有す人のことを「リーダーシップがある人物」と言うことが出来ます。

決して「立場」だとか「肩書き」によって自動的に「リーダーシップがある人物」が生まれる訳ではないことも合わせて理解しておいて下さい。

 

 

では、再び山へ行くことになった集団の話に戻りましょう。

一言で「山へ行く」と言っても、どの山へ行くか等によって装備品等は大きく異なってきます。

また、登山は危険がつきものですから気象状況の確認や安全な登山ルート等を把握し、計画的に登山することが大切になってきます。

 

そこで、具体的な登山計画を立てて、皆に持ち物などを指示する等登山する上で必要となる事項を伝えると共に、登山当日は集団の装備品を確認したり、計画通り登山できているかをチェックしつつ予定より遅れている場合は「予定より遅れているから山の中腹まで急ごう」と指示を出す人が現れました。

 

もう、お分かりになったと思いますが、この人がやっていることこそ「マネジメント」です。

つまり「マネジメント」とは、皆が共有した一つの目標に基づいて、そこへ辿り着くことができるようにするための具体的な策や必要な物を策定したり、その策のとおりに状況が進行しているかを管理し、改善が必要な場面が生じたら改善策を講じることなのです。

 

両語について理解して頂いた上で、いよいよリーダーシップとマネジメントの違いです。

 

両者の意味の説明でかなり鮮明になってきたと思われますが、整理しますと

リーダーシップとは「進むべき方向性や目標を皆に示して気持ちを一つにまとめる役割」です。

マネジメントは「定まった目標を実現するための方策や必要な物を考え、それらに基づき実行させることを管理する役割」です。

 

こうした違いがあるのに、ビジネスシーンでは時々両者が混同されて使用される場合が多いのですが、実はそこにも理由があります。

その理由とは、特にビジネスにおいて言えますが「マネジメント能力なきリーダーシップは成立しにくい」からです。

 

山登りの事例でリーダーシップを発揮した人が登場しましたが、その人にもし全くマネジメント能力がなかったら、果たして集団を説得することができたでしょうか。

例えば山登りには危険がつきものですから、そうした不安を訴える人に「山登りは楽しいから山へ登ろうよ」と訴えるだけでは説得は難しかった筈です。

つまり、集団の気持ちを鼓舞して一つにまとめる資質や要件として、特に経済的リスクが伴うビジネスシーンにおいては、多少緻密な計画性を策定でき、リスクが生じた場合に回避する方策等を指し示すことができる能力も大切になってくるからです。

 

一方、マネジメントはマネジメント能力が備わっていることは前提ながら、ビジネスにおいては、そうした人に会社組織上で一定の立場や権限が与えられれば、ある程度その役割を果たすことができます。

しかし、マネジメントの役割を果たす人に立場さえ与えればリーダーシップが全く不要かというと、そうとは言えません。リーダーシップに長ける必要はなくとも、ある程度集団に影響力を与えることができる人間的資質も備わってなければ、マネジメント能力をフルに発揮することは難しいと言えます。

 

この点について整理しますと、

リーダーシップとマネジメントはその役割やそれぞれに応じて求められる資質や能力等が異なるものの、リーダーシップを発揮するには一定のマネジメント能力も求められるし、また、マネジメントの場合でも肩書きや立場だけでなく、やはり多少なりともリーダーシップの能力も求められることから、両者の境界が曖昧になり、しばしば混同して使用される原因の一つになったと言えるのです。



このように両語は明確に異なる役割でありながら、特にビジネスにおいてはその能力において相互に求められる面があります。

従って両語を正しく認識した上で使い分けるには、両語に対する意味の理解や違いだけでなく、相互に求められる面があるこも認識しておくことだと言えます。