「見てチャンミン」

「何ですか...これ?」

「仲のいい職場のデザイナーに描いてもらったんだ」

「これってどこかのお店ですか?」

「架空のお店。あくまでもイメージだよ。」

「すっごくオシャレで素敵なお店ですね!さすがデザイナーさん!温かい雰囲気のアットホームなイメージかな? 僕の好きな感じです」

「いい感じだよね、俺も気に入ってるんだ」

「でもなんで洋服のデザイナーさんがお店のデザインを描いたんですか?」

「ん? いや、何となくチャンミンのお店を描いてみてもらったんだ」

「僕のお店?!」

「そう、いつか独立した時にこんなお店はどうかな~って」

「ユノ...」

「あ、勝手にごめん!あくまでも俺のイメージだから!こんな感じはどうかなぁ~って...」

「いえ、すっごく素敵なデザインです! いつかお店を持てたら、こんな感じにしたいな! 温かみがあって街に溶け込む雰囲気のお店がいいんです」

「でもほんと、俺が勝手にイメージしただけだから! チャンミンのお店はチャンミンが気に入ったデザインにしないとね!」

「ううん、一目惚れしました。ユノ、ありがとうございます! 
自分のお店かぁ..... なんだか更に夢が膨らみました」

「叶うよ絶対。夢で終わらせたらダメだよ。一緒に叶えような」


約2年後
チャンミンがどんな決断をして
俺たちはどこで何をしてるんだろう

俺は
正直チャンミンには母国で店を構えて欲しいと思ってる

母国にもチャンミンのファンは沢山いるんだ。
以前勤めていたケーキ屋さんには、チャンミンの作るケーキを求めて多くのお客様が開店前から列を作って待っていた

少し離れた場所から、わざわざ買いに来て下さるお客様もいた

そんな皆さんに、チャンミンが心を込めて作りあげたケーキをまた食べてもらいたい

チャンミンも色々と独立に向けて考えているみたいだけど、まだきっと答えは出ていないだろう。
店を持つってそんなに簡単な事じゃないもんな


「ねぇユノ... 
僕、2年後もフランスで働いていこうかと思うんです。
お店を持つのはもっと先でもいいかな...って。まだまだここで教わることもあるし。自分のお店を持つにはまだ未熟だし...。もちろんいつかは必ず自分のお店を構えようとは思ってるんですけど...」

「え...?」

「ユノも今のお仕事すっごく楽しそうだし、2年後に辞めちゃうのは勿体ないと思うんです」

「ねぇチャンミン...
もしかして俺のこと...気にしてくれてる? 俺の仕事のことを考えてくれてるの?」

「.......いえ...あの...」

絶対そうだ。
俺の仕事のこと、ずっと気にしてくれてたもんな。 " 自分の都合でユノを振り回すのは嫌だ "って。


「だったら気にしなくていいんだ。俺ね、韓国へ帰ったらやる事が出来たから」

「やる事...ですか?」

「うん、そう。」

「ユノ?」

「今の会社が本格的に世界中にブランド展開するんだって。 ソウルにもお店と支社が出来るから、韓国へ戻るならそこで働いて欲しいって言われたんだ」

「えぇぇ?!  いつの間にそんな話が」

「前々から何となく聞かされてたけど、正式に決まったのはつい最近。韓国人の俺はちょうど良い人材だったみたい。」

「そんな偶然というか奇跡というか...こんな事があるんですね...!」

「凄い展開だよな。俺もかなりビックリしたもん。
まぁ2~3年以内に...って言ってたから、時期は微妙だけどな」

「そしたら、ユノが韓国に戻るタイミングで僕も戻ります! それまではこっちで働きます」

「独立が先延ばしになるかもしれないよ?」

「全然構いません! ユノと同じタイミングで帰国します! 離れるのは嫌なんです」

「チャンミン...  ありがとう
俺も...離れ離れは嫌だ...」

「何があっても僕達は一緒です。夫婦ですから」

「そうだね...夫婦だもんな。 俺、本当に良い妻をもらったなぁ」

そっと抱き寄せる。


いつか
チャンミンがお店をもったら
その店のパティシエ服を俺がデザインしたい

その服を着てケーキを作るチャンミンが見たい

笑顔でケーキを買っていくお客様と
そのお客様を見て嬉しそうに笑うチャンミンが見たい

でもね

俺の一番の願いは

チャンミンと一緒にずっと笑って生きていくことなんだ

「チャンミン」

「はい?」

「明日ストロベリータルト作ってほしいなぁ」

「冷蔵庫に入ってますよ」

「え?! 作ってくれたの?」

「はい。そろそろユノが食べたいって言う頃だと思って」

「さすが俺の妻!  食べよチャンミン!」

「切り分けますね」

嬉しそうにキッチンへ向かう愛しい人 


やがてコーヒーの香りが漂うと

「ユノ~、食べましょ!」

最愛の人が笑顔で呼んでいる

「うん!ありがとう!食べよう!」


チャンミンの作るストロベリータルトは
初めて見た時と同じように
キラキラと輝いて
まるで宝石のような美しさだ

「いただきまーす」

「はい、どーぞ」

1口頬張ると
フワッ...と口の中に広がるイチゴの香り

出会った頃と変わらない
優しい優しい味がした


「ん、美味し」

「ユノの為に心を込めて作りましたから」

「こんな美味しいストロベリータルトを一生食べられるなんて、俺は幸せ者だ」

「こんなに美味しそうに食べて貰えるなら、一生作り続けますね」

「俺にとってこのタルトは大切なケーキなんだ」

「2人の出会いのきっかけのタルトですもんね」


2人を繋いでくれたストロベリータルト


「おかわり!」

「え?! もう食べたんですか?! ちゃんと噛んで食べて下さいね!」


俺たちに幸せを運んでくれたストロベリータルト


「ね、チャンミンが俺に食べさせて」

「もぉ~ ユノの甘えん坊」

「早く早く!」

「はい、ど~ぞ」

「ん~  美味し♡

ね、チャンミン
これからは2人で一緒に2人の
夢を叶えていこうな」

「はいっ!」


ほら
甘い香りに包まれた2人は
こんなにも幸せだ




ストロベリータルト② fin.