いよいよ結果発表が始まった

審査員長がマイクを握ると、更に緊張感が増す

「それでは第3位を発表します。

洋菓子店milk tea所属  チェ・ミンホさん」

スポットライトが第3位を受賞したパティシエを照らした。
大きな拍手と共に、会場から おめでとう!の声がとぶ

信じられないと言うように驚くミンホさん。
まだ僕より若そうなのに、凄いパティシエだな...

優勝はもちろん、このコンクールで3位以内に入ることは物凄く名誉なこと。

それなのに第3位で僕の名前が呼ばれなかったことが、正直ショックだった

強気だったら僕の心がどんどん萎んでいく

ごめんねユノ...
せっかく応援してくれたのに

それでも健闘を称え、ミンホさんに大きな拍手を送った


「続きまして第2位」

お願い...僕の名前を呼んで...
神様...


「ONE  VOICE所属  チョ・キュヒョンさん」


今度は第2位のパティシエにスポットライトが当たる

僕じゃない...
僕の名前は呼ばれない

今度こそ本気で心が萎みきった

悔しくて涙が溢れそうなのを懸命に我慢して、キュヒョンさんに拍手を送る

直ぐ傍で嬉し涙を流すキュヒョンさん

嬉しいよね
認められるって嬉しいよ

彼は僕と同い年くらいかな
同年齢くらいの若いパティシエが次々と賞を取っていく

思わずギュッと手を握って悔しさと情けなさに耐えた

憧れだったコンクール
出場できただけでも
招待状を貰えただけでも光栄なのかもしれない

勝ちたかった
本当は勝ちたかった

これからもっともっともっと修行して、ここで認められるパティシエにならなくちゃ

それが僕を応援してくれた人達への恩返しだもんな

「それではいよいよ 第1位の発表です」

審査員長の声が遠くなる
もう僕の名前なんて呼ばれる訳がない

せめて優勝したパティシエに、心からの拍手を送ろう

気持ちを切り替えて真っ直ぐ前を見る


「栄えある第1位に選ばれたのは







洋菓子店Reboot所属   シム・チャンミンさんです」


スポットライトの幾筋もの光が僕に降り注ぐ

会場中から割れんばかりの拍手と おめでとうの声が飛び交った

「え...?」

ポカ~ンとする僕の胸に、ライバル達が抱き着いてきた

「え?  え? 」

僕...?
僕が...優勝...?

状況を飲み込めない僕に、たくさんの " おめでとう " と拍手が送られる

「シム・チャンミンさん。こちらへどうぞ」

「え...」

背中を押されて前に出ると、優勝の証の大きくて重たいトロフィーと賞状が僕の手に。
そして由緒ある真っ赤なマントが肩に掛けられた

更に持ち切れない程の花束も抱えて、そのままわけも分からず優勝のスピーチに立った

「えっと... まだ信じられないのですが...
このような立派なトロフィーや賞状、ありがとうございます。
まずは、未熟な僕をここまで導いてくれた店のオーナー、いつも支えてくれる同僚に感謝します。
そして僕を信じて応援してくれた大切な人にも、お店のお客様にも感謝しています。
僕は...ここがゴールではないと思っています。もっともっと勉強して、更に上を目指して行きます。共に戦ったパティシエの皆さんに負けないように頑張っていきます。
本当にありがとうございました」

深々と頭を下げると、再び大きな拍手に包まれた

まだ信じられない
夢を見てるのかもしれない
そんなフワフワした気分だった
なんてスピーチしたのかもよく分からない。


そこからは色んな取材のカメラに囲まれ、インタビューを受け、様々な番組の出演依頼にと...
僕の周りはめちゃくちゃに混みあった

僕の勤め先のオーナーや同僚も多くの人に囲まれ、大変な騒ぎだ

ユノの元へ行きたいのに
なかなか辿り着けないよ

一番「おめでとう」って言ってほしい人の元に行けないもどかしさ。

どこにいるの?
ユノ...
直ぐにでも傍に行きたいのに

見渡しても僕の周りを囲む人でユノが見つからない

それでも笑顔で写真撮影やインタビューに応えなくては。
お店の看板を背負ってるんだ
しっかり対応しなくちゃ



ライバルや関係者からも祝福され、もみくちゃになった僕。
解放されたのは結果発表から2時間が過ぎた頃だった

クタクタのボロボロになった僕が控え室に戻ると

「チャンミン! おめでとう!」

大好きな大好きなユノが笑顔で出迎えてくれた

「ユノ...」

ポロポロと溢れる涙

驚きすぎて嬉し泣きするのも忘れてた僕。
それなのにユノの顔を見た瞬間、堰を切ったように涙が一気に溢れ出した

「チャンミン!本当に本当におめでとう!
よく頑張ったな! 偉いぞ!」

泣きじゃくる僕を抱き締めて、背中を撫でてくれる

「ユノ...ユノ...ッ」

「うん、俺はここにいるよ」

「ユノ... ユノ...」

ユノの名前を呼ぶ度に溢れる涙

「チャンミンが落ち着いたら、2人でお祝いしような」

頷くのが精一杯。
嗚咽で上手く喋れないんだ

あとから控え室に入ってきたオーナー達。
ボロ泣きする僕を見て笑ってる

「チャンミン、やっと我に返ったか。驚き過ぎて泣いてなかったもんな」

「優勝の瞬間、ポカーンとしてたよな」

テンションの高い皆が楽しそうに笑う

その笑い声さえ、僕の涙腺を刺激する

「ほらほらチャンミン、ユンホさんがびちょびちょになっちゃうぞ。」

そう からかわれるくらい、僕の涙は止まらなかった



続く...