STORY (パンフレットより)

日本大震災から10年目の仙台で、全身をしばられたまま”餓死”させられるという異様な事件が相次いで発生。

第一の被害者三雲忠勝(永山瑛太)、第二の被害者は城之内猛(緒方直人)。いずれも人格者、善人として知られる人物で、怨恨が理由とは考えにくかった。

 宮城県警の刑事・笘篠誠一郎(阿部寛)は、部下の蓮田智彦(林遣都)とともに捜査を開始。福祉保険事務所の課長であった三雲の直属の部下・

丸山幹子(清原果耶)から、彼らの仕事内容を聞くうち、生活保護の実態とその深い闇を目の当たりにする。

そして、三雲と城之内がかつて同じ福祉保健事務所で勤務していたという共通項から、やがて一人の男が捜査線上に浮かび上がる。

男の名は利根泰久(佐藤健)。過去に起こした放火事件で服役していたが刑期を終え、三雲の死体発見の数日前に出所していた。利根は10年前、震災の避難所で遠島けい(賠償美津子)と一人の少女と出会っていた。

児童養護施設で育った利根、夫に先立たれ一人暮らしのけい、震災で親を亡くした少女の三人は、、あるで家族のように肩を寄せ合って暮らしていた。ところが数年後けいの生活が困窮、利根はけいを伴って生活保護の申請のため福祉事務所を訪れるが、担当した三雲と城之内の杜撰な対応に激昂し、福祉保健事務所に火を放ったのだ。笘篠はこの当時の事件が一連の殺人事件に深く関連すると睨み、容疑者として利根のお逮捕に乗り出す。ところが利根は出所後に就職した工場から姿を消し、行方がわからなくなっていた。

 そんな中、さらに第三の事件が起きようとしていたー。

狙われているのは、国会議員で若手政治家のホープ・上崎岳大(吉岡秀隆)。実は上崎も、かつて三雲や城之内と同じ福祉保健事務所に勤務していたのだった。 上崎を拉致するため姿を現した利根は待ち構えていた笘篠たちに取り押さえられ、事件は解決したかに見えた。

しかし、笘篠は長年の勘から利根がまだ何かを隠していると感じる。その時、笘篠のもとに驚愕の報せが届くー。

 

感想 ネタばれ

 

 

東日本大震災の時の避難所で身を寄せる人々の姿を見て当時を思い出しました。

私自身は、千葉県で被害も最小限、家族も皆無事。

しかし、TVをつければ家や車、大勢の人たちが津波に流され吞み込まれる映像が映し出されているのを

ただ、ただ茫然と見ているだけでした。

震災から10年。

震災によってもたらされたもの。

多くの命が失われ、家族がばらばらになったり、仮設住宅の生活を強いられたり。

様々な問題が今もなお山積みされていることでしょう。

 

映画では「生活保護」の問題を取り上げてました。

本当に困っている人たちには申請が通らず、

一方では、生活保護を受けながらも贅沢な暮らしをしている者もいる。

日本人の気質として、「人に迷惑はかけられない」という想いも根底にあって、

なかなか声を上げられない人が多くいる。

そんな人たちの代弁者的立場が遠島けい(賠償美津子)でした。

 

10年前、震災当時の避難所でけいさんと出会った利根泰久(佐藤健)とカンちゃんと呼ばれる少女。

孤独な3人はけいさんの家で、身を寄せ、家族のように暮らし始めます。

けいさんは年金に入っておらず、貯金はほんのわずか。

でも、ささやかな暮らしに一時の幸せを感じる3人の姿がありました。

しばらくすると、利根は就職の為に遠くに行き、カンちゃんは里親にもらわれていき、

疑似家族はバラバラになってしまうのでした。

その後、利根がけいさんに生活保護の申請をすすめ、受けられることになった生活保護。

利根が再びけいさんの元に訪れた時、けいさんは餓死という凄惨な死をとげてました。

生活保護を受けていたはずじゃなかったのか?

福祉保健事務所に詰め寄る利根。

事務所側の理由としては、けいさんには娘がいて、娘に連絡をとるようにと言ったところ、

けいさんはそれを拒絶したという。

けいさんには、産まれた我が子を里子に出した過去があり、絶対に娘にだけは迷惑をかけるわけがいかないという事情があったのでした。

そこで、事務所側としては、生活保護申請を辞退するようにすすめました。

それは、けいさんにとって生活できないということを知ってながら、見殺しにするような宣告だったのです。

利根に詰め寄られた事務所側は、震災当時、多くの事務処理に追われ、皆、疲弊していた。どうしようもなかった。

との”言い訳”がありましたが、利根は納得できませんでした。

役所に火をつけ、刑務所に服役する利根。

 

映画は、この福祉保険事務所の担当者たちを餓死させるという、まるで映画「セブン」のようなホラーさながらな殺人現場を映し出します。

 

利根がてっきり犯人かと思わせておき、実際の犯人は意外な人物だったという設定は、

お決まりなパターンですが、

この犯人が抱える大きな”怒り”というのは、

世のなかの理不尽さであり、”憤り”でもあったかと思います。

一体何の為に政治家がいて、国の為、世の中の為と言いながら、

本当に困っている人たちにお金が行きわたらない仕組み。

声が届くには、どうしたらわかってもらえるのか。

映画は極端な殺人という手法をとってて、やりすぎなのでは?

とも思いましたが、この理不尽極まりない世の中、

こういう形で訴えた犯人の姿に世の中のたくさん苦しんでいる生活困窮者の声なき声が聞こえてくるようでした。

みんな一生懸命に働いて、税金を納めている。

でも、何かのきっかけで生活ができなくなった場合、頼れるのは国であり、地域でもある。

 

当時、福祉事務所で働き、今は代議士である 上崎岳大(吉岡秀隆)。

彼の存在が、この先きっとより良い世の中に変えて行こうとするのでは、

というのが、映画の中での「希望」であり、「祈り」のようにも感じとられました。

 

そして、今のコロナ禍の中の世の中にも当てはめて考えさせられました。

 

とにかく、役者さんたちがすばらしかったです。

刑事役の阿部寛さん、役の笘篠刑事もまた震災当時、妻と息子を失ってました。

微妙な表情の変化に、悲しみを読み取ることができました。

 

利根役の佐藤健さんさの目のするどさ。

唯一、けいさんとカンちゃんと暮らしているときは優しい笑顔が見られました。

 

何といってもケースワーカー役の清原果耶さんの圧倒的な演技でしょう。

すごい女優さんだな、と思いました。

 

最後、防波堤で海を見下ろしながら、笘篠刑事(阿部寛)と利根(佐藤健)が語り合うシーンがあるのですが、

大津波があった現場で彼らは、ちゃんと海と向き合って過去を振り返る。

忘れることのない大震災。

 

10年経つと、人々の記憶からだんだん薄れていきがちですが、

絶対に忘れてはいけない、と映画を観ながら思いました。

 

映画、良かったです。