これ、観る前までは躊躇してしまってました。
テーマが、介護。認知症。老いていく母。
涙、涙なしでは観られないのでは、と思ってましたら、
映画は私の予想をはるかに超え、静かに淡々と染み入るように見せてくれました。
それは、映画の間、自分の母のこと、亡き主人の母のこと、そして、これから向かう自分の姿さえ、
重ねて考える時間を持てたということでもありました。
これは監督の見事な演出と同時、役者さんたちの自然な演技、
「ホンモノ」の室内風景(井上靖の実際の自宅・書斎での撮影)、そして、織り込まれる四季折々の美しい日本の風景
(伊豆・湯ヶ島、軽井沢)
すべての要素が絡み合って、すばらしい映画となっていた点が大きいかと思いました。
観終わってから原作を読んでみました。
原作は、映画より淡々としてました。
映画は原作の持つ文学的な香りを十分活かしながらも、登場人物に少し手を加え、
主人公洪作(役所広司)が母に対してわだかまりを抱えながら、
老いていく母に優しい態度で接する姿。
そこに、泣かせるエピソードを加え、
映画的に持っていくところが、見事でした。
昔の家族って、こういうものだったと、つくづくいいな、と思わされるシーンの数々。
もちろん、作家井上靖の物語でもあるので、
描かれる家庭は、庶民の暮らしとはちょっと違って、何もかもまぶしいくらいの品の良い暮らしぶりも豊かな家庭。
父親は家族に「奉仕の精神」を教え、家族は長である父親に素直に従う。
