舞台はデンマーク
 
医師アントンは、紛争が起こっているアフリカの地に赴任してて、
キャンプに避難している人々の治療にあたっている。
担ぎ込まれる患者には、腹を切り裂かれた妊婦もやってくる。
妊婦は“ビックマン”と呼ばれる悪党にお腹の赤ちゃんは男の子か、女の子かという、賭けの対象として、腹を切り裂かれてしまっているのだ。
 
妻とは別居中。(アントンの浮気が原因)
二人の息子は妻の元でくらす。
長男エリアスは学校で執拗なイジメにあっていた。

ある日、母親の葬式を終えたクリスチャンがエリアスのクラスに転校してくる。
クリスチャンは父親に対して確執がある。
癌の母親の看病を途中で放棄したのではないかと思っているのだ。
 

エリアスがイジメを受けていると、クリスチャンも巻き添えをくう。
翌日、クリスチャンはイジメっ子のソフスに暴力で仕返しをする。
呼び出された父親クラウスは、報復にはきりがないと諭すが、
クリスチャンはやり返さなければだめだ、と口ごたえする。
 
この少年クリスチャンが、とても繊細な少年で、
頭が良く、普通の少年より大人びているのだが、
「暴力には暴力を」というような過激な考えの持ち主で、見てて何をしでかすか分からない危ういものを持っている。

いじめられっ子のエリアスはスェーデン訛りと、歯の矯正をネタにいじめられているのだが、根が素直で、優しい気質の持ち主。
 
この二組の家族の
子供たちの友情、夫婦の問題、学校でのいじめ、デンマークでのスェーデン人への差別などといろんな問題を絡めながらストーリーが展開していくのだが、
「暴力には暴力」しかないのか。
「復讐」を食い止めるものは何か。
といった簡単には解決できそうもないテーマが底にはあった。
子供たちには「暴力はいけない、報復にはきりがない」と教えながら、
実際は、世界はそれこそ、報復のしあいである。
 
映画は、いじめられっ子の父親である医師アントンにそのことをたたきつけてくる。
デンマークが舞台なのに、アフリカに医師として赴任している状況が、
最初不自然に感じられたのだが、
ある究極とも言える出来事で、その理由を知ることになる。
まるで、映画「セブン」でのブラピの選択を強いられた時の状況のように。
医師としてのモラルをとるのか、人間としての感情を最優先させるのか。
ここは衝撃的であった。
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そして、子供たちの世界にも、映画は復讐の末に起こることの結果を見せる。
 
頭の良い、繊細な少年クリスチャンに襲い掛かる精神的な苦痛。
何かをすれば、結局回り回って、帰ってくるということ。
世界で起きている止めどもない「負の連鎖」。
未来を生きる子供たちに、平和な世の中を与えるにはどうしたらいいのか、
と問いかけているような映画だった。
誰でも人の子供であり、親でもあったりする。
明確な答えは出てはいなかったが、
私は、どんな状況であっても「復讐」は何の解決にもならないし、
結果、自分に苦痛として返ってくるもの、改めて教えられたような気がした。

この映画の救いは繊細な少年クリスチャンが、
周りによって救い出されたことだった。
クリスチャン役をやった少年の見るからに賢そうな表情や、
孤独を抱えながらも、友人エリアスに対する友情の篤さ、
父親に対して、想いをぶつけるシーンなど、すばらしい演技だった。
 
ぜひ、これから子育てする世代に観て欲しい映画かもしれない。
 
監督 スサンネ・ビア
アカデミー賞(外国語映画賞)(2011年)
ゴールデン・グローブ(外国語映画賞)(2010年)
原題: HAEVNEN/IN A BETTER WORLD