主人公は、ごく普通の看守。
ジェームス・グレゴリーという男。美人の妻と二人の子供を持ち、人種差別者。
黒人差別=アパルトヘイト。
1968年南アフリカではそれが当たり前でした。
当たり前どころか、差別をしいないと罰せられるという驚くべき事実がありました。
南アフリカで生まれ育ちコーサ語という現地の言葉を話せるグレゴリーは
ロベン島に収監されたマンデラの看守になります。
看守グレゴーリーを通して偉大なネルソン・マンデラという人物像が私たちにも見えてくるようでした。

 

子供の頃は、偏見もなく黒人の子供と一緒に遊んだグレゴリー。
その体験があるためなのか、他の人たちとちょっと違ってて、
もやもやとした霧のようなものが心の奥底にありました。

 

長い間マンデラと接するうちに霧が晴れて行くように、本当に正しい道というものが見えてくるようになっていくのです。

 

イメージ 2


 

“正しい道”が見えてくるというのは、同時にグレゴリーにとって茨の道
グレゴリーの妻は日ごろから子供たちに
「黒人はテロリスト」とはっきり言うような偏見の塊のような女性。

 

グレゴリーもごく平凡に家庭を守って妻が望むより良い生活を手に入れたい。
でも、自分の中に芽生えた正義感。
そして
「歴史のひとこまになりたい!」という決意が、平凡な家庭を脅かすのを承知でマンデラと接するようになります。
黒人びいきの子供は殺すという強迫さえ受けながら。

 

妻も愛する夫について行こうと努力します。

 

家庭の主(あるじ)として、グレゴリーの苦悩は大変なものだったでしょう。
それをも乗り越えてしまう魅力が、マンデラにありました。

 

偉大な指導者、ネルソン・マンデラ。
27年間投獄されながらも、指揮し続けた人物。
「暴力には暴力を」と言う彼は言葉とは違って
静かな佇まい、威厳のある風格、教養のある気品、
グレゴリーの息子に対し勉強を教え、愛情さえ持ってくれる人柄。

 

映画の中のテレビに映される当時の映像が度々出てくるのですが、
私の中でも記憶が蘇ってくるようでした。
黒人が暴動を起こし、警察が銃を向ける。子供にまで。
遠い昔の話ではない。
ごく最近の出来事、20年ほど前まであった話です。

 

マンデラが大統領となって、黒人政府はまず持っていた核兵器を廃絶、死刑も廃止。
マンデラはアパルトヘイトへの復讐をさせず。社会が憎悪の連鎖で壊れてしまうことを防いだと
パンフレットに福島みずほ社会党党首(08年現在)の言葉で書かれてありました。
フランス革命しかり、宗教改革しかり、権力を獲った途端、今まで自分たちを弾圧し、苦しめてきたひとたちを逆に虐殺、弾圧することを人類は歴史上やってきた。マンデラは違った。と続いてます。

 

ジェームズ・グレゴリーを演じたジョセフ・ファインズは『恋に落ちたシェークスピア』で色気のあるシェークスピアを演じてましたが、今回は家庭の平凡な父親から一転苦悩する男を演じて上手かったです。

 

マンデラを演じたデニス・ヘスバートはTVドラマ『24』にも出演。
貫禄、威厳、白髪も混じった姿は本物そっくりでした。

 

この二人が「スティックファイティンング(剣術)」をする姿は美しいものがありました。
両方の手に棒を持って両刀使いのように闘うものですが、見事な剣さばきでした。
二人の魂の交流を見るようでした。

 

グレゴリーの妻にダイアン・クルーガー。
ごく普通の妻だけど夫を愛し家庭を守る女性を演じる姿はまた別の美しさがありました。


 

**********
余談です
私ごとでありますが、結婚してから勤めた会社が南アと取引しており当時テレックス(パソコンは無かった)を使って南アへ向けて書類を打っていたことがありました。
豊富な財源のある南アは日本にとってとってもいい貿易相手だったのです。
いまから20年以上も前の話ですが、当時は「アパルトヘイト」がまだまだ根強い時代。
「アパルトヘイト」という言葉は知っているもののそれに対して対岸の遠い出来事としか思ってなかった私です。
世界が「アパルトヘイト」に抗議の声を上げていた時代、日本にとってはいい取引先だったのですね。
**********


 

原題:GOODBYE BAFANA
フランス/ドイツ/ベルギー/南アフリカ