ケン・ローチ監督の映画。
「麦の穂をゆらす風」でたちまち彼のとりこになった私。
暑い最中、渋谷まで行ってきました。
狭い映画館の会場はケン・ローチ作品見たさの観客で大入りでした。

 

舞台はロンドン。
職安(派遣労働)の会社をクビになったアンジー。
一人息子を抱えるシングルマザーだ。
借金を抱えた彼女は息子を父母の元に預け、とにかく働かなければならない。
思い立ったのが、日雇いの斡旋の仕事。
相手はポーランドやイランなどの国の移民の男たち。
友人のローズと一緒に、知りあいのパブの裏庭で仕事を紹介する。

 

男まさりに、仕事を分け与える姿はかっこ良さもある。

 

最初は順調だったのだが、やがて資金繰りに困ってしまう。
そんな時に不法移民相手なら、いくらでもお金が入ってくるということを、聞かされる。

 

それはとっても危ない綱渡り。

 

不法移民の家族を家に呼び、暖かいスープと食べ物を与えたこともあるアンジー。
友人のローズに「あなたはマザー・テレサのつもりかなにかなの?」と言われながらも。

 

それが、息子の為だとはいえ、お金に目がくらんだアンジーはだんだんモラルを失っていく。
移民に対してとった行動はひどいものだった。。
しまいに友人ローズからも見放されてしまう。

 

ドラマ「ハゲタカ」の中、村上ファンドを彷彿とさせられた主人公鷲津が吐くセリフを思い出す。
「お金を儲けることがいけないことなんですか?」

 

この主人公アンジーが吐くセリフは
「ここは自由な世界なのよ!」

 

貧しい、立場の弱い不法移民たちからの詐取。

 

背景にイギリスが抱える移民労働者の実態がある。
ポーランドからも多くの移民労働者がやってきてて、
アンジーと恋仲になるカロルもその一人。
彼が言う。
「住むところも、賃金も最低。みんな嘘つき。自分はもう国に帰る」

 

日本でも最近問題になった派遣労働者からもぎ取っていた名目上の手数料。
あの事件を思い出させるようなお話だ。

 

この主人公アンジーは恐ろしい目に遭いながらもたくましくエネルギッシュ。

 

パブの経営者が言ったセリフ。
「この世は女で成り立っていくんだ」
アンジーを見てると、妙に納得させられるセリフだ。
深く考えず、猪突猛進で進む彼女。

 

映画は途中サスペンスタッチの場面はあるものの、主人公に感情移入をすることもないし、
「麦の穂をゆらす風」のような、心を揺さぶられる結末も用意されてない。

 

でも、何かを考えさせられるような映画だ。
「自由な世界」のシステムが、実は虚構で、
結局力とお金のある人間が、弱い者を食い物にしていくような。

 

普通の女性が平気でお金の為にやってのける社会の仕組みの怖さもある。
でも、いつかしっぺ返しがくるんだろうな。
他人事のお話ではないのだ。


 

監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
2007年:イギリス・イタリア・ドイツ・スペイン合作
原題:It' A Free World...

 

2007年ベネチア国際映画祭 最優秀脚本賞

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