海炭市という架空の街で暮らす人々の物語。オムニバスです。
どの物語にもどこか暗さが漂い、それは最初の物語の造船所のリストラ。
その空気が、この街に漂っているが為だったのかもしれません。
海炭市、函館だなって、すぐに最初のシーンでわかります。
観光地としての函館の美しい街。それとはまた別の顔。
そこに生きている人々にはそれぞれの事情があり、
それは、
住んでいるものにしか分からない生活が映画にはありました。
映画はその生活をありのままにスケッチしたように描かれていました。
何かを訴えたいとか、感動させたい、とかそういうものは感じられませんでした。
ストーリー
造船所で勤める兄(竹原ピストル)、妹(谷村美月)。リストラに伴い職を失います。大晦日の夜、兄は小銭を数え、妹と一緒に山に登り、 元旦を迎える。
帰りのロープウェイ代が足りず、兄だけが山を歩いて降りる。
街の開発のために立ち退きを迫られた老婆、トキ。市役所から説得に訪れる若い職員に耳を貸そうともしない。
動物を飼っており、その臭いが近所迷惑となっていた。ある日、猫が帰ってこない。
プラネタリウムの職員(小林薫)。妻(南果歩)は夜の仕事に出掛けていく。何としてでも辞めさせたいのだが、
聞く耳を持たない妻。息子は冷え切った家庭から避けるように口をきかなくなった。
昔はこんなんじゃなかったのに。
ガス屋の若社長晴夫(加瀬亮)は、浄水器の仕事に手を出すがうまく行かず、父親にそんなのはやめろ、と責められる。 いつもイライラしている。
再婚相手の妻は連れ子の息子に手を出す。気がついた晴夫は妻を殴る。妻は晴夫の不倫にヒステリック。みんな同級生だった。
ガス屋に営業に来ていた博(三浦誠己)。
ここの出身だったのだが、路面電車の運転士の父親と会うことを避けていた。
原作者はどんな人だろうと、調べてみました。
佐藤泰志
私の知らない作家さんでした。
以下ウィキペディアより抜粋
1949年4月26日ー1990年10月10日
ロープを携えて外出し、翌日自宅近くの植木畑にて遺体で発見。享年41歳とあります。
芥川賞候補、三島由紀夫賞候補に挙がりながらも、落選。
没後はすべての作品が絶版となっていたが、『海炭市叙景』の映画化が追い風となり、2010年以降に
『海炭市叙景』『移動動物園』『そこのみにて光輝く』が次々と文庫で復刊され再評価がなされるようになった。
とありました。
小説は読んだことがありませんが、映画から感じたのは、
作者の故郷に対する想いでした。
抜け出すことのできない、故郷のしがらみ。
住む街は変わっても、いつも心の中に故郷の空気が漂っている風にも感じられました。
生きておられたら、(私が思うに)山本周五郎のような作品も描いていただろうにな、と思うと残念な気持ちです。
本も読んでみたいです。
