初めて入るその店は『和食』の看板が出ていた
人気店の隣にあるのでそちらが混んでてあきらめて
隣に流れる客もあるのかな、今日の私たちのように
こじんまりした店だった
ちょうど一組お会計を済ませて帰るお客さんと入れ替わりのような恰好になった
すみっこの、ちょうどカウンターの入り口の奥側のテーブル席についた
コロナあけのTさんと向かい合って座るのは正直気が引けたのでTさんが奥の窓側に行くだろうと予測して私は通路側に座った
斜めに向かい合う方がマシに思えたからだ
うっかり喋って唾とか飛んだらヤだわ!
でもTさんは奥まで行かず通路側、私の目の前に腰を下ろしたorz
もうあきらめるしかない
食べるとき以外はマスク
食べるときは黙食で を考えていた
これが好きな男との久々の逢瀬だったならどんなにか…
コロナあけであろうと気にせず何度も愛しい顔を見つめるだろうな
そもそもそんな相手とだったらこんなとこでメシなんか食ってねーで
ふたりで籠るよねw
ピタっとくっついてよりそってなでまわしてなめまry
「姫は何を召し上がりますか?」
Tさんの声で妄想の世界から引き戻された
見るとTさんがおどけた顔でにこにこしながらこちらにメニューを向けている
別に何でもいいわほんじつのおすすめていしょくでいんじゃね?とか思いながら
`本日のおすすめ定食‘を 頑張って口角上げながら指さした
病み上がりでいつもにも増してしょぼくれて見えるTさんは
「じゃ、俺も」と言って
オーダーをとりにきた店員さんに
「これふたつ」とにこやかに言った
私は心の中でひでー言いようをしていて もしも心で思ったことがみーんな声になって出ちゃったらそら大変へんたいだな なーんて考えたらおかしくなってしまって笑いたいのを必死でこらえていた←ほんとひでーw
ハンバーグ定食が運ばれてきた
見た目もお味もごくごくフツーなハンバーグ定食だった
私からしたら、この、恋愛対象圏外だったTさんがさっきからちょいちょい
私に対して特別感をアピールしてきているのは感じていて、
それをなんとか回避したくてあえて私はワイルドwにふるまった
大きく開けた口いっぱいにハンバーグをほおばってもぐもぐして飲み込んだ
むさぼるように盛りのいい定食をたいらげたw
まだTさん、半分も食べてないけど気にしないわ
さっさと食べてマスクをつけ
お茶をすすり口の中ぶくぶくwww
実はちょっと前に憧れのロジャオさんとランチしたことがあって
その時はおしゃれなカフェでおしとやかにお喋りをしてゆっくりとおランチをいただいた後にとってもお上品におコーヒーをいただいた
お喋りも楽しくてお食事も美味しくてそれはそれは素敵な時間だったっけ
今日の私は全くの別人だ
それはそうだ
だって目の前のしょぼくれた男は圏外だもん
いいひとではあるし好意もあるわ
顔そのものはかわいい
ただテニスが上手くないし←これは絶対外せないのだ
やっぱり圏外なのだ
妙にこじれて気まずくなるのも嫌だ
どうでもいいお喋りをしながらようやくTさんが食べ終わる頃
私はすっかり飽きちゃってもう帰りたくてしょうがなかったけどなんとか笑顔を保っていた
ちょうど話が一区切りついたところで私が
「そろそろ帰りましょうか」と言った
「そうだね ここは俺が払うよ」とTさん
「いいよいいよ 自分の分は払います」
「いやいや 俺が誘ったんだから」
店員さん困ってる…
よくあるやつだどっちでもいいからはやいとこ会計済ましてくれって思うよね
私もバイト経験そこそこあるからわかるわ…
二度、三度、自分の分を出したけど受け取らないTさんと困り顔の店員さん
仕方なく私は自分の分のお金をひっこめた
「ごめんね じゃ、お言葉に甘えて」
外に出て
「ごちそうさまでした! じゃ、またサークルでね」
と言うと
「これから復活祭だよ?行こうよ」とTさん
「え?これからまたテニスするの?ちょっと疲れちゃったから無理無理」
「テニスじゃないよ 神事だよ」
「は?なになに?なにするの?」
「だからキリストの復活祭だって 俺のマリアになって」
「へ?」
なに?どゆこと?