まずはじめに、すべてのブログ内容はあくまでも「個人的な見解」であることを明記しておく。
<湿し水編①>
「水を制するものはオフセット印刷を制す」とはどこかで聞いたような格言であるが、確かに的を得ている言葉だと思う。色調・見当・乾燥(硬化)など品質に関わる大部分に影響を与える部分だからである。
まず、現在のオフセット印刷における湿し水の管理には「pH管理」と「定量管理」が存在するが、基本的には「定量管理」がベターな方法であると個人的には考えている。
多少極論になるが、個人的な見解を述べるならば連続給水+CTP刷版を使った印刷機で「pH管理」をしている印刷オペレーターはまったくの論外であり、おそらくpH管理をしているオペレーターはアレ?と思うほどエッチ液が減っていた経験が1度や2度はあるのでは無いだろうか?
これはおそらくpH管理をしていることの弊害である。
ただし、オフセット印刷において湿し水のpH値は弱酸性が良いというのもまた事実。
この点に関して、「pH管理が論外な理由」と、相反するような「湿し水は弱酸性が良い理由」を説明してみる。
では最初に【Q1】なぜ「pH管理」が論外なのか?
逆に考えてみてほしい。そもそもエッチ液の取り扱い説明に「エッチ液は湿し水がpH〇〇になるように添加してください」と書かれているだろうか?または「エッチ液でpH値をコントロールしてください」と書かれているだろうか?答えは否。
正確には「エッチ液は〇〇~〇〇%の範囲で添加してください」というような希釈率に関しいての内容が記載されているだけであり、どこにもpHに関しての記載は無いのである(すべてのエッチ液を知っている訳では無いが)。
にも関わらず「オフセット印刷は弱酸性!」とあまり深く考えずにpHで湿し水を管理しているとどうなるのか?
湿し水を交換した最初のうちは問題がない、当然である。
変な言い方になるが、水を交換した直後の段階ではエッチ液を定量管理で湿し水に添加してもpH管理で添加してもおおよそ水:エッチ液のバランスは同じだからである。
例えば、定量管理で希釈率2%と設定した場合、水100リットル中に2リットルのエッチ液が添加されるとする。
これに対して、pH管理でpH5に設定した場合でも、水100リットル中に約2リットルのエッチ液が添加されるとする。
なぜエッチ液の添加量に大差がないのか?
それはエッチ液というのは規定範囲内の希釈率で添加すれば印刷に最適とされる弱酸性におおよそなるように設計されているからである。
このことから、どちらも最初は約2リットルのエッチ液が「結果的」に添加されるという意味でバランスがとれているわけである。
が、しかし印刷をしていくまたは何日かするとどうなるだろう?
例えば「毎日湿し水を10リットル消費し、仕事終了後に10リットル湿し水を追加していく」と仮定する。
この仮定に基づくと定量管理であれば、毎日9.8リットルの水と0.2リットルのエッチ液が合計で10リットル追加されるだけで、何日経っても水:エッチ液のバランスは98:2から崩れない。
しかし、この仮定に基づくとpH管理ではそう単純にはいかない。
なぜか?
湿し水の中にpH値を変動する成分が溶け出しているため、湿し水のpH値は弱酸性のままというわけにはいかず、エッチ液の添加量がpH値の変動量によって増減してしまう為である。
(余談ではあるが、湿し水のpH値を変動させる成分はインキにも紙にも存在する)
すると、湿し水のpH値は5からだんだんとアルカリ性方向に変動していく。
ということは、毎日湿し水が10リットル消費していくとすると、pH管理だと毎日エッチ液0.2リットル+αが添加されてしまうことになる。
このプラスαはなぜ発生するのか?
単純に数字を当てはめてみると
【湿し水を交換した場合】湿し水:水=pH5:pH7=エッチ液2リットル:水98リットルと仮で定義する
あくまでも極端な言い方をするが、この定義だと約100リットルの水のpH値を1下げるのにエッチ液が1リットル必要になる。
これを頭において、湿し水10リットル消費後には湿し水:水=pH6:pH7=エッチ液1.8リットル:水88.2リットルとなり、総量を100リットルに戻す為に約10リットルの水が追加され、pH5に戻す為に約1リットルのエッチ液が添加される計算となってしまう。あくまでも極端な言い方だが。
すると、結果的に出来上がった湿し水100リットル中にはエッチ液が2.8リットルとなり、たった1日でエッチ液の添加パーセントは2%から2.8%と40%増の97.2:2.8、単純に毎日40%増の計算だと2日後には96.1:3.9、3日後には94.6:5.4となり、pH値は同じであるにも関わらず水:エッチ液の比率はとんでもない数字になってしまうのである。
ものすごい暴論ではあるが、何日しても水が減ったりしなければ「定量管理」では基本的に水もエッチ液も追加されない。
がしかし「pH管理」だと水が減っていなくてもpH値が変化していればエッチ液だけどんどん追加されてしまうのである。
再度繰り返す、エッチ液は「規定内希釈率」が大事なのであり、pH値をコントロールするものでは無い。
以上のことから、「pH管理は論外」であり「定量管理がベター」なのである。
補足事項として、なぜ「pH管理」が存在するのか?
これは自分が社会に出る前のことなので人に聞いたり調べたりした内容になるが、どうやらその昔は刷版を製版するにあたり、エッチング処理をしていたことに由来するらしい。
あまり詳しくはないが、簡単に言うと「湿し水を弱酸性にして刷版を腐食(エッチング)させることで非画線部に親水性をもたせながら印刷」をしていたそうな・・・。
その名残で湿し水に混ぜる添加剤をエッチングから文字って「エッチ液」、湿し水のpH値は弱酸性というルールができたらしい。
要するに、昔は本当に湿し水のpH値を弱酸性にしなければ印刷が出来なかったということ。
だが、刷版もエッチ液も進化し、pH値で刷版の親水性を担保する必要が無くなったのである。
湿し水編②につづく
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