母の不倫の話です

母はこの人だと信じると、とことん信じぬく人

父が生きてる時はそれが父だった
とても尽くしていたと思う
父と結婚して、見知らぬ土地に嫁いだ母
近所の習わしや、親戚付き合いが大変だったと思う
おばさんたちに混ざって、まだ若かった母が炊出しをしている姿が印象に残ってる

父が病気になってからは、病院に泊まり込み、夕方私達を迎えに来て、父と私達を面会させ、また親戚の家に送り届け、病院に戻る日々だった
まだ小学生だった私は家から徒歩1〜2分の親戚の家から学校に通った
朝起きたら、一旦家に戻り、洗濯物をし、学校の準備をしませ、親戚の家で朝ごはんを頂き学校に行く日々が続いた

私達がお世話になっていたのは父方の兄だった
伯父はとても優しい人だったが、伯母はとてもいじわるな人だった
よく母が嫌味を言われたり、嫌がらせをされてたのを知っていたので、私達兄弟は母の顔に泥を塗らないように礼儀正しく行儀よくするよう心掛けていた
それでも洗濯機の使い方も知らないのかとまだ小学校低学年の私達をネタに母に嫌味を言っていた

母はきっと肩身が狭い思いをしただろう

そして、この当時まだ本人への病名の告知や余命宣告はしない時代だったので、父は病気のことは知らなかった
でも最期の方は父も死期が迫っていることに気づき母に遺言のような言葉を残したり、何度も何度も父は母にまだ小さな子供たちを残して逝ってしまうことについて謝っていたようだった

母は最期の最期まで父を励まし、きっと元気になると嘘を付き続けた

父が亡くなり、しばらくはゆっくりしていたと思う
私も父が亡くなった当時のことは記憶が曖昧でただ夕方母がボーッと洗濯物を畳みながら
『これからどうしようね』
と言った姿だけが妙に頭に残っている