ただその一言に尽きる。
これほど心地よく、また複雑な読後感に包まれた作品は珍しい。
悪徳高利貸しのシャイロック。
友人思いのアントーニオ。
アントーニオに励まされ、直接の支援も受けて、
美しく若い金持ちの女性に求婚しに行く、
若く血気盛んなバサーニオ。
そしてその妻となる、美しくまた賢い女性、ポーシャ。
すべてが生き生きと描かれる。
シェイクスピア独特の軽妙で洒脱な言い回し、
心に残る名言の数々。。
友人バサーニオのために、悪徳高利貸しのシャイロックにお金を借りる、商人アントーニオ。
彼は友人を助けるため、また自分の成功を信じ、
シャイロックの厳しい条件での取引に応じる。
その取引とは、期限内に借金を返済できない場合、
自らの肉一ポンドと引き換えと言う恐ろしい条件。
その金を元に、バサーニオは美しい女性ポーシャに求婚しに行く。
ポーシャもまた、彼を待ち望み、「三つの箱選び」と言う婿取りの条件に勝利したバサーニオを喜んで受け入れる。
しかしその日、アントーニオの船はことごとく海に沈み、彼は一文無しとなる。
そしてシャイロックの恐ろしい取り立てが始まる。。
そんなアントーニオを救うのは、美しい友人の妻、ポーシャ。
彼女は法律博士に姿を変え、夫の大事な親友を救うために一計を講じる。
「一ポンドの肉を取るがよい。
ただし、一滴の血も流してはならない」
この名裁きにより、アントーニオは九死に一生を得るのであった。。
いやほんとドキドキした

アントーニオどうなるんだろうと思った

それにしても、証文を逆手に取った、素晴らしい判断

そして悪徳シャイロックも、悲しい一面を見せる。
差別されてきたユダヤ人として、キリスト教徒へ正当に復讐したい気持ち。
傷つけられてきたその憤懣を、どうにかして晴らしたい。
「ユダヤ人には目がないか?ユダヤ人には手がないか?四肢五体、感覚、感情、喜怒哀楽がないか?同じ剣で傷を受け、同じ病にかかり、同じ薬で治っても、同じ冬の寒さ、同じ夏の暑さは感じないと言うのか?」
この有名なセリフには、差別されてきた者の苦しみが詰まっている。
ナチスを例に出すまでもなく、これほど当たり前に差別化されてきた人種の深い苦悩が現れていて、切なく、苦しくなった。
このシャイロックの痛みが、時を経てナチスの迫害に繋がり、アンネの苦しみ痛みとなり、人類に汚点を残したのだと思うと。。
このシャイロック像が典型的なユダヤ人ステレオタイプだとか、
そのためにユダヤ人が悪徳の金貸しのイメージが強まったとか
そう言う人はこのシャイロックの苦悩に現れる作者の心を読み取っていない。
そうでなければ、金貸しシャイロックにこんな苦しげなセリフを吐かせる必要はないのだ。
ただのケチで傲慢で残酷な男としてだけ彼を表現すればよかったのだ。。
なんにせよ、この名裁きとシャイロックの苦悩とで、素晴らしい読後感を残してくれた作品でした。
これは何回でも読みたい

シェイクスピアに人々がはまる理由が今更ながらにしみじみ分かりました
