手塚治虫著「ぼくのマンガ人生」。
ブラックジャックについてこのように書いている。
「いままでは医者は、ひたすら命をながらえることが
大きな目的であり、商売であったわけです。
ところが、これからはそうではないとぼくは思うのです」
「・・・そういう社会の中で、何を頼りに人間は
生きていくのかということをみんな迷うと思うのです。
そういう時に、肉体も助けるけれども、
これからの生き方も助けるという医者がどんどん増えて
もいいのではないか。それはもしかしたら
医者の本当の姿ではないかな」
そして、手塚が最も苦境に立ったときの逸話。
友人の葛西氏のが語っている。
手塚が膨大な負債をかかえた時に、手塚の代わりに
彼が債権者の対応をしたのだ。
そういう友人がいた、という話だけで
手塚の人生はすばらしかった、といえるだろう。
「20人もの債権者の前で土下座しているときのことです。
私は手塚氏に『一緒に立ち会いますか』と聞いたのですが
『いえ、僕にはマンガを描くしかできません。
それで借金を返すしかないのです』」
「明日、借家に移るという日の前の夜、
電話がかかってきました。
『明日借家に行きます』と
晴れ晴れとした声で言うのです」
以下は葛西さんについて手塚が書いた部分。
「うれしかったですね。
・・・自分とはあまり関係ないと距離をおいて
考えていた人たちが、じつはひじょうにあとで
近しい人になってくれるということを体験したのです。
そのおかげで一期一会がぼくの座右銘になったのです」
この苦境が、その後の名作を生んだのだ。
手塚にとって必然の出来事だったのだ。
大きな仕事をさせるために、大きな試練をその人に経験させる。
であるから苦境必ずしも思い悩むべきことでなく、
気を引き締め、
謙虚に、
感謝し、
1歩を踏み出す。
じっくり全身に苦境を浴びせるのが良い。
