あやかし太夫 ~変わり者の医者~
彼女のそんな唐突な質問に、相手がうろたえるのを見ながら 『あやかし太夫』 は少し寂しげに、諦めたような顔でこう言うんだ。
「ぬしさんも、やはり答えられないのでありんすか」 とね。
で、そんなある日の事。
場所はうって変わって町の中のとある剣術道場に、とても腕のたつ男がいたんだけどね、
彼の所に遊郭の使いの男が飛び込んできてさ・・・ その男が言うには、ある遊郭の主人が持病の心臓の発作を起こしているので診てほしいとの事だったんだ。
で、どうやら医者を生業にしているらしいその男は、診療器具を手に取ると一目散に駆け出したんだけどさ、その姿を見た町の人は
「またあの先生が走り回ってるなぁ」
「あの先生になら、娘を嫁にもらって欲しいと言う親御さんもいるのに、いつまでも一人身で患者の事ばかりだからなぁ」 と、
なんだかその男は町の人々の信頼は厚いけど、少し変わり者というカンジに思われていたようなんだ。
で、無我夢中にかけてきたその男は目の前の門を見てあらためて自分が向かっている先が遊郭だって事を思い出すと… ここまで来といて尻込みして逃げ出しそうになったんだ。
でも、使いの男に引きずられるように連れていかれた男は無事に診察が終わると、遊郭のだんなさんも 「先生は剣術の腕はたいそうなモノなのに女の方はからっきしなのかね?」 なんて和やかに談笑していたよ。
で、そんなところに件の 『あやかし太夫』 がやってきたわけだけどさ、
彼女もその辺の医者なら裸足で逃げ出すほどの知識と技術の持ち主らしくてね、実際に普段からその遊郭のだんなさんの心臓の病は彼女が看ていたようでね、
それを 「どこの誰だか知らないヤツ」 に診察された彼女はかなりキツい言い方をしてさ 『男のメンツ』 ってヤツを潰すような彼女の物言いに、むしろ遊郭のだんなさんの方が男に必死で頭を下げていたんだよ。
~つづく~
「ぬしさんも、やはり答えられないのでありんすか」 とね。
で、そんなある日の事。
場所はうって変わって町の中のとある剣術道場に、とても腕のたつ男がいたんだけどね、
彼の所に遊郭の使いの男が飛び込んできてさ・・・ その男が言うには、ある遊郭の主人が持病の心臓の発作を起こしているので診てほしいとの事だったんだ。
で、どうやら医者を生業にしているらしいその男は、診療器具を手に取ると一目散に駆け出したんだけどさ、その姿を見た町の人は
「またあの先生が走り回ってるなぁ」
「あの先生になら、娘を嫁にもらって欲しいと言う親御さんもいるのに、いつまでも一人身で患者の事ばかりだからなぁ」 と、
なんだかその男は町の人々の信頼は厚いけど、少し変わり者というカンジに思われていたようなんだ。
で、無我夢中にかけてきたその男は目の前の門を見てあらためて自分が向かっている先が遊郭だって事を思い出すと… ここまで来といて尻込みして逃げ出しそうになったんだ。
でも、使いの男に引きずられるように連れていかれた男は無事に診察が終わると、遊郭のだんなさんも 「先生は剣術の腕はたいそうなモノなのに女の方はからっきしなのかね?」 なんて和やかに談笑していたよ。
で、そんなところに件の 『あやかし太夫』 がやってきたわけだけどさ、
彼女もその辺の医者なら裸足で逃げ出すほどの知識と技術の持ち主らしくてね、実際に普段からその遊郭のだんなさんの心臓の病は彼女が看ていたようでね、
それを 「どこの誰だか知らないヤツ」 に診察された彼女はかなりキツい言い方をしてさ 『男のメンツ』 ってヤツを潰すような彼女の物言いに、むしろ遊郭のだんなさんの方が男に必死で頭を下げていたんだよ。
~つづく~