恋敵 ~失って気づく物~ | TWO ALONE ~二つの孤独~ 

恋敵 ~失って気づく物~

それからしばらくして、仕上げたZを納品しに主人公は ”ETERNITY” の本社ビルにやって来たんだ。

オイルにまみれたツナギを着た主人公は明らかに場違いで、

周囲の女子社員の視線のイタさを感じていた孫の方は 「だからせめてスーツにしよう って言ったのに」 って言ってたけどさ、

社長室に通された主人公が 「一刻も早く見せたくてすっ飛んできてしまった」 なんて言うのを聞きながら、鞠絵さんは 「フフッ 夢次郎さんらしいわ」 って答えて…

いかにも待ちきれなさそうな彼女が 「で?どこにあるんですか? 早く乗ってみたいわ!」 そういったんだけどね。

主人公はシリアスな顔になると、そんな彼女に

「じつは鞠絵さん あっしゃあ車と一緒に アンタにわたさにゃならんモンがあるんじゃ」 そう言ってね

例の辞表を机の上に置いて 「えッ」 っと言った鞠絵さんに、それが橋爪さんの物である事を伝えるんだ。

その事に、彼女は大きな驚きと… そして 「どうして?」 っていう戸惑いを感じるんだけどさ、

そんな彼女に主人公は言ったよ

「男には引き際ってのがある

鞠絵さんと一所懸命に突っ走って 気が付きゃ会社はこんなに立派になった

橋爪さんも踏ん切りつけたかったんじゃないですかねぇ

あらゆる事において… ね」

ってさ。

でも、鞠絵さんは到底納得できなくてさ

「そ… そんなのってないわよ… 」 そうつぶやいた彼女は

「橋爪さんは誰よりも私を理解してくれた

そしてどんな時にも 私の力になってくれた だから私はここまでやって来れたんじゃないッ

彼がいなくなったら私はどうすればいいのよ」 彼女は、そう言った直後に…

自分の胸が、締め付けられるような痛みに苦しんでいる事に気づくんだ。



     ~つづく~