「部下をかなしい(いとしい)と思うだけではすぐれた将とは言わぬ・・・ | TWO ALONE ~二つの孤独~ 

「部下をかなしい(いとしい)と思うだけではすぐれた将とは言わぬ・・・

そのかなしいと思える部下に 『死ね』 と言えるようになって、はじめてすぐれた将と言えるのだ」


あるブロガーさんのところで、コメント欄 にこんな台詞を書いたことがあります。


「それくらい、人を動かすというのは大変なことなんでしょうね」 という意味で。



そんなわけで、今回はその 《かなしい(いとしい)と思える部下に 『死ね』 と言わなければならない男の話しを書きたいと思います。


その話しは、俺のもう一つのブログで書いている、膝頭の骨を抜かれ、顔に入れ墨をされた軍師が主人公のお話しなんだが、その中に登場する主人公の五百人にのぼる兄弟達がいるんだ。


戦になれば、彼の手足のごとく縦横無尽に戦場を駆け巡る無敵の戦士と化す・・・ そんな兄弟達の中に、可愛い顔をして、しかしその顔からは想像もつかないほどの毒舌の女の子がいたよ。


でもね、その子もやっぱり主人公の事をとても慕っていて、そしていつもいつも主人公の事を考えていたんだ。


「こんな時、兄さまならどうかんがえるだろう?こんな時、兄さまならどうしたいだろう?」 常に彼女はそう考えていたよ、なぜなら彼女は主人公の影武者だったから (ノ_・。)


かつて彼らは、



ともに戦い


ともに笑い


ともに泣き


ともに飢え


そしてともに戦ったんだ



その中で、彼らは誓ったんだ 「戦のなかに生まれた我らが、戦のない世の中を作るのだ」 とね。


だからこそ、彼らはお互いを ”兄弟” と呼び合い、そしてそんなたくさんの兄弟を作ってくれた主人公の事を、誰もが 「兄さま」 と慕っていたんだ。


でもね、国家の存亡をかけた運命の決戦の時に、彼のそばにいて、常に彼を支えていたのは、兄弟達の誰でもなかったよ。


兄弟達も知らないうちに、主人公のそばにいるようになって、常に誰よりも主人公の近くにいるようになった一人の女性がいたよ。


それを見て、嫉妬を感じたその ”妹” は、その女性にはっきりときいたよ。



『あんた、わたしの兄さまのなんなの?』



彼女は答えるんだ、「ただの護衛士です」 って。


でも、その言葉には間髪いれずにするどい口調で言葉がかえってきたよ。



『私らをさしおいて?』



とね。


そして、今にも消え入りそうなそんな切なげな表情をする彼女に、その ”妹” は、嫉妬と羨望と、そして・・・ 何かやりきれない、そんな表情を向けながら、ある昔の話しを始めたんだ。



『 昔、私たち兄弟の中に


なんのとりえもない子がいた   ものすごく口の悪い ただの嫌われ者


でも兄さまだけは、その子がどんなに悪態をついても くすくす笑うだけだった


それが気に入らなくて


その子は兄さまにたくさん酷い事を言った


いつの間にか兄さまの悪口を言う事だけで


日々を過ごすようになっていた


でも



ある日




兄さまはその子に


真剣な顔で

こう言った



「引け受けてくれますか   ある任務を


我々の中で、最も危険で、最も残酷な任務です」』



そして、その ”妹” は、自分が引き受けたその 《最も危険で、最も残酷な任務》 のことを話すんだ、それは・・・



兄さまの影武者



有事の際、兄さまの身替りとなって敵を引きつける


あるいは、策によっては   死 そのものが役目になる』



でも、そんな言葉に ”妹” は言うんだ、


「うれしかった」 


ってね。


そして彼女は、その時 ”兄さま” が言ってくれた事を話すんだ。



『悪口を思いつくのは 人よりも深くたくさんの事に気付くからだと



それを言ってしまうのは 言わずに すます不義を 自分に許せないからだと



その子の悪口は 傷つきやすく 優しい心根から生まれてくるのだと』



そんな、”兄さま” の一言一言を・・・ 本当に、かみしめるように話した彼女は、こう言ったよ。



『影となる者は

多くの事を学ぶ為にずっと兄さまのそばにいられる


そばにいられる理由ができたから』



でも彼女は、何よりもうれしいと思ったことを、こう言ったよ。



『そして何より


その子に 影という冷酷な任務を課す 兄さまの顔が


    とても悲しそうだったから



と。