最高の笑顔 ~後編~ | TWO ALONE ~二つの孤独~ 

最高の笑顔 ~後編~

崩壊する竜宮城から、部下達は脱出を始めたよ。

でも、その中の一人が、脱出する素振りも見せずにその場に立っている男を見て、こう問いただしたよ。


『おい!早く脱出しろ。乙姫さまの命令に逆らうのか?』


でもね、その男はこう答えるんだ。


『ふん!俺は反逆者だ。乙姫さまの命令にしたがう筋合いはない。』


そう 言ってね、それを聞いた部下達は口々に 「ならば俺も反逆者だ!」 「俺もだ!」 そうい言いながら彼女のもとに集まってきたよ。

そうして、事件はまるく収まったんだ。

それからしばらくして、かぶき町の一角に 「竜宮城」 ってスナックがあってさ、その店内で・・・  確か、『近藤勲(こんどういさお)』 とかいう名前の困ったヨッパライが、「また女にフラれた」 とか言ってクダを巻いてたんだ。

それで、その男のツレらしいが、部下だか、友達だかはわからんが、性格が悪いのだけはわかる男が、そいつをなだめていたよ。


『ハイハイ、介錯は俺がしてあげるから』


なんて、ブッソウな事を 「半分は本気なんじゃねえのか?コイツ」 ってな感じで言っててね。

見かねたママさんがたしなめると、その 『困ったヨッパライ』 は 「ハイハイ、これでも昔は竜宮城の乙姫さまだったって言いたいんでしょう?」 そう言って、今度はママさんに質問するんだ。


『んじゃあ、その乙姫さまにききたい。

女ってのは、どうやったらコッチをむいてくれるんですかねえ?』


その言葉に、ママさんが 「そうだねえ、男だったら四の五の言わずに一言・・・」 そう言いかけたその時、ちょうどお店に入って来たお客さんがいたよ。

そして、その男はこう言うんだ。


『キレイだな』 


って、それを聞いた 『困ったヨッパライ』 は、「オイオイあんた、そりゃあいくらなんでも ヒネり がなさすぎ・・・ 」 そう言ったけど。

その男は、こんな風に言葉を続けたよ 

「俺は今まで生きてきて、こんなにキレイな人に会ったのは二度目だ。」

そして、彼はこう言うんだ。


『アンタ、昔も今も キレイだな』


と。

そして、振り返った乙姫さまは、最高の笑顔でその男を迎えたんだ。