『グッバーイ ジョニー』
ブログネタ:捨てられず困っているモノは?
参加中今回は、《注文された酒が無いと本気で泣いて悔しがるマスター》 のいるショットバーを舞台にしたお話しでも書こうかと思っています、よかったら読んでやってください。
その店には、マスターにとっては困った奴なんだけど ( ̄ー ̄; でも、やっぱり憎めないヤツ!そんな感じの困った常連さんが一人いたんだ。
どんなヤツかというと、せっかく本格的なショットバーに来ているのに、いつも注文は決まって 「ウイスキーのウーロン茶割り」 そんな男。
その日もお店にやって来た彼に、マスターはこう言うんだ。
『いらっしゃい、今日もウイスキーのウーロン茶割りかい?』
でも、彼はこう答えたよ 「いや・・・今日はジョニ黒をください」 ってね、思わず 「どうしたんだい?めずらしい」 そう言ったマスターに彼は、「うん、今日はどうしてもジョニ黒じゃなきゃダメなんだ」 と答えてね。
そして、「今日はお世話になった先輩のお葬式に行ってきたんだ」 そう言って、マスターにお清めの塩をもらうとその先輩の事を話し始めたよ。
その先輩は、彼が駆け出しの頃からお世話になってた人だそうで、仕事の仕方から悩みまで、それこそありとあらゆる相談にのってくれていたらしいんだ。
そて、その先輩はいわゆる ”酒豪” ってやつでさ、特にジョニ黒がすきだったらしいんだ、その先輩いわく 「金がある時はジョニ黒を飲め!ない時はヘアトニックを飲め!」 だって。
マスターはそれをきいて、「スゴイ人だね」 って驚いたけどね、でもどうやらその先輩は、お酒の飲みすぎで身体を壊してさ、それで入院することになったらしいんだ。
彼は、最後にお見舞いに行った時のことをマスターに話してね、先輩は喜んで出迎えてくれたらしいんだけどさ、「病室にばかりいると気が滅入る、どうだ、散歩に付き合わないか?」 そう言ってね・・・
そして、先輩は林の近くに来ると、突然あたりを見回してさ 「誰か来ないか見はっていてくれ」 彼にそう言ったそうなんだ。
そして、先輩が木の根元を掘り出すと、そこから1本のジョニ黒が出てきたよ。
彼は 「あっ!」 と驚いたけど、そのボトルを飲む先輩を止められなかったんだ。
するとその先輩は 「ふぅーっ さすがジョニ黒だな」 そう言ってね、半分残ったそのボトルを彼に差出して 「どうだ、お前も飲め!」 そう言ったんだ。
でも彼はその残りをもらうのを遠慮してね、すると先輩は 「そうか、じゃあこれは俺がもらうぞ」 そう言ってね、一気に飲み干してしまったんだ。
そして、その先輩は空になったボトルに 頬ずりしながらこう言ったよ。
『グッバーイ ジョニー』
と。
そんな話しをした彼は、
『だから今日は、ボクはジョニ黒を飲まなきゃいけないんだ』
マスターにそう言ったよ。
人はさ、確かに 「捨てたくても捨てられなくて困っているもの」 があったりするけど、でも時には 「これを捨ててまで生きようとは思わない」 そんなものを持っているひともいると思います。