『男って、いい女の前ではこういうものだと思う』 ~中編~ | TWO ALONE ~二つの孤独~ 

『男って、いい女の前ではこういうものだと思う』 ~中編~

 急に暗い顔をして「わたしを一人にした事が許せない」 そう言った彼女は、今度は主人公にこう言ったよ。


『あなたは本当に、わたしが怖くないのですか?』


とね。

その言葉に、主人公は 「怖くねえよう。 俺ぁ あんたが怖いってんなら、もっと怖い思いをしたことがあるもの。」 そう答えてさ。

すると、自分の腕で胸を隠しながら立ち上がった彼女はこう言ったよ・・・


『じゃあ、その証拠をみせてくださいな』


って、それで主人公はきっちりと ”証拠” をみせてくれるんだけどさ、その直後にのぼせて、風呂場の出口で気を失ったんだ。

まあもっとも、湯船の中で激しい運動を、しかも突然すりゃあ、当然のぼせるわなショック!

と、まあそんな事があったわけだが、そういう訳で彼女は主人公の言葉に納得して 「ありがとう」 そう言ってたんだが。

さて、朝になってみると彼女の姿はなく、”お目付け役” の少年も彼女の姿を見ていない
様子だったよ。

それでさ、主人公はとりあえず彼女の言っていた事を確かめる事にしたよ。

彼女の言っていたお武家さんの家の近所で話しを聞くと、確かにその家の次男坊は菓子問屋に婿入りしていてさ、彼女との間に生まれた子は、お兄さんが引き取って、自分の子として育てていたらしいんだ。

事情が事情なだけに、親子の名乗りをあげられないのは当然だけど、でも彼はやっぱりその事を気にしていたよ。

一方で、例のお兄さんは弟を婿入りさせた金で遊び歩いていて・・・

そして、その時も彼は好き放題に遊んだ帰りだったんだ。

そんな帰り道で、道端に一人の女が立っていてね、声をかけてきたその女にお兄さんが誰かとたずねると・・・その女は顔をあげて言うんだ 「わたしをお忘れですか」 ってね。

それはあの、お兄さんに毒を盛られた彼女だったよ。

お兄さんはその時の事を必死で言い訳をしたけど、当然ながら彼女は聞き入れなくて、彼の首をしめたよ。

自分の首に食い込む彼女の手を引き剥がそうと、お兄さんは彼女の腕をつかもうとしたよ・・・  でも、不思議なことに彼女の腕はうっすらと透けて、お兄さんの手はすり抜けてしまっ
たんだ

お兄さんの首をしめる彼女の形相は凄まじく、彼女の爪は首筋に食い込んでそして・・・ 鈍い音とともにお兄さんはうごかなくなったよ。

そこからまた話しは主人公に戻るんだけどさ、彼女の話しを確かめた主人公が寺に戻ってくると、あの ”お目付け役” の少年が血相を変えてやってきて、主人公を本堂まで引っ張っていったよ。

そこには、一人の ”仏さん” が放り出されていてさ、知らせを受けた奉行所の役人も来ていたよ。

その役人さんの話しで、その ”仏さん” が、彼女の言っていた 《あの人》 のお兄さんだと知った主人公は、突然とびだしていったよ。

”お目付け役” の少年も、役人さんもただ呆然と見送ったけどね、主人公は心当たりがあったんだ・・・

彼女の居場所に・・・ そして、彼女が何をしようとしているのかに。




     ~つづく~