『ゆるす』 ことについて

その人は、かつて妻子のいる男性に恋をしたんだそうだ。

二人とも真剣な気持ちで付き合っていたんだ、その男性は本気で全てを捨ててもいいと考えたんだけど、でも奥さんにこう言われて別れる事が出来なくなったんだよ。


『私と別れるつもりなら、子供を殺します』


そう言われて、男性は奥さんと別れる事が出来なくなったよ。

それとね、その男性はとても身体が弱い人でね、そのあまりの身体の弱さに徴兵されなかったというエピソードがあるほどの人でさ…

子供の頃からずっと色々な持病を持っていて、複数の薬を飲んでいたんだ。

しまいには、それに追い打ちをかけるようにその人の身体はガンにむしばまれてしまったよ。

その時のことを、その女性はこう言っていたよ　「○〇ちゃんは、長年お薬を飲んでいたから血管がボロボロでね、摘出手術ができなかったの」　って。

でもさ、そんなある日の事、その男性はこう言ったそうだよ。


『ぼくの手を握っててほしいなぁ。

体がどこかに行ってしましいそうで怖いんだ。』


そして、彼女がだまって手を握ってあげると、彼はこう言ったそうだよ。


『ごめんね、僕は君には・・・　　　　何もしてあげられなかったね』


その時の事を思い出して、彼女はこう言っていたよ。


『その時、わたしはこう思ったの。

「どうして？どうしてそんな事を言うの？

わたしはあなたと暮らせて幸せだったのよ」 』


と。