パティ・スミスが6月4日に東京で
詩の朗読をするという。
そして、逢いに行ける環境、身体、お金、全てに感謝の想いが湧いた1日。
先週通勤電車の車内アドで流れるを見た。
えっ?と思った。
パティ・スミスが来日するのか・・!
パティ・スミス
遡ること1970年代後半。
イギリスではピストルズを始め
パンクムーブメントが興っていた頃。
NYで詩の朗読や音楽活動をしており
「パンクの女王」と称されていた女性。
のちのちロックの殿堂入りをしたその女性、
それがパティ・スミスだ。
私が持つパティ・スミスのイメージは
ピストルズのヴォーカルをして
「あの馬、馬、馬って歌ってる女だろ」
と言わせた「Horses」のインパクト
ブルース・スプリングスティーンと共作した
名曲「Because the night」
彼女の伴侶・元MC5のフレッド・スミス作
「People have the Power」
の強いメッセージ性
そして、ロバート・メイプルソープの撮った
アルバムジャケットの黒髪と白シャツ
にマニッシュな雰囲気
私にとってパティ・スミスは、
存命であるにかかわらず伝説の人
のようなものだったから"東京に来る"
ということが想像つかなかったのだ。
(私が知らなかっただけで、実際は20年弱前に初来日、
フジロックにも2度も出演し、3年前にも来日してマス)
これは、、、い、行きたいかも。
そう思っていたら、翌日ランチに入ったお店にチラシが置いてあった。
その日の帰りの電車でまたタイミング良く広告が流れた。
よし行くかー!
早速チケットを探してみたが直前だけに空席は少なく、当然の事ながらステージから遠い。
そこは生で観れるだけでOKと購入し6/4の昨日すみだトリフォニーホールへ行ってきた。
The Poet Speaks
特に深い意図はないのだけれど、私は事前に公演についての詳細を調べないことが多い。
なので、共演者がすごいメンバーだった事に気づくのは本番中だったり、あれは何だったんだ?と後で調べたりする(完全な復習型)。
今回もしかりで、そのおかげでか先入観無しにパフォーマンスに集中し(ものは言いよう)楽しんできた。
ここは縦1列の席なので、1人で聴きに来る人には割と良い席だと思う。
初めに前座の演奏があった。
頭に沿うような形のストローハットを目深に被った色白の女性がピアノを弾き、チベット人の男性が歌っていた。
繊細なのに伸びと太さのあるパワフルなビブラート。
た、ただ者じゃない!
(そりゃあそうだろう)
人って、あんな声も出せるんだ。。。
歌を習い始めた身としては興味をそそられまくる。
勿論、帰る前に彼(テンジン・チョーギャル)のアルバムを購入した。
そして、、、パティ・スミス登場!
真ん中分けにした鎖骨まである白髪の頭部とまっすぐな細い身体ですいすいと、ピアノを演奏するフィリップ・グラスと共に登場したパティ。
黒髪だったパティも、今年で70歳になりフィリップ・グラスは80歳になる、と初めに自分達の紹介をした。
今回はフィリップ・グラスとのコラボレーション公演で、彼らと親交の深かったビート詩人アラン・キンズバーグへのオマージュというテーマだった。
公演時点で私はフィリップ・グラスもアラン・キンズバーグも未知の人

ただ朗読されるキンズバーグの詩の翻訳を村上春樹氏・柴田元幸氏が担当することは広告で知っていた。
もしかしたら同じ公演をVIP席で村上氏が観ているのかもしれないと思うとそれだけでもワクワクした。
ステージのスクリーンにはギンズバーグの写真の数々が映し出され、朗読が始まると村上・柴田両氏の翻訳が流れた。
全身に流れ込むようなフィリップのピアノとパティの詩の朗読はひとことひとことが力を持っており見事だった。
英語だと詩をよむのはread a poemになると思うが、日本語だとうたうとも表現できる点をふと思い出した。
パティの朗読はピアノをバックに途中からリズムを孕み歌っているようにも聴こえた。
公演名はpoet speakなので、捉え方としては間違っているのだろう。
ただ私としては彼女が詩をspeakしていても時に彼女の歌での表現との境い目が分からなくなるように感じたのだ。
そしてホールなので響くのは当然だが、彼女の声がホールの隅々まで届いていることに驚いた。
声に詰まりがない。
身体の中心に一本の太い管が通っていて、そこからダイナミックに声が発せられている。
私が同じようにマイクに声を通しても、あんなに声は通らないと思えた。
パティは想いと口に出している事が完全に一致しているんだ。
人は、想いと行動が一致している時にパワーが最大になるのかもしれない。
共感するかしないかは受け手次第だが、伝えたい想いがシンプルに、ダイレクトに、多くの人に届けられる人、を目の当たりにできたのはとても貴重な体験だった。
パティとの共演の他に、フィリップ・グラス単独での演奏時間もあった。
この人がとんでもない人だと感じたのはその演奏だった。
まるで、岩から水が湧き出るように鍵盤に触れると音楽が豊かに溢れ出す。
聴いていると、まるで車窓から流れる景色を眺めている気分になり、私は音楽に浸りながら旅をしている感覚に陥った。
演奏が終わったとき、もう少し旅を味わいたくなるような演奏を聴けた事がとても幸福に思えた。
公演の最後に、前座を務めた2人も舞台に登場した際パティがストローハットの女性を私の娘と紹介した。
な、なんと!!!

「知らない」はこうしていつも私にサプライズをプレゼントしてくれるのだ

娘がピアノを弾き、娘の為に作った曲や夫が作った曲を歌うパティ。
ギターは彼女と長い付き合いのギタリストが務め、ピアノの椅子に座っていないフィリップはギタリストと共にコーラスを担当していた。
それは、公演でありながらあたたかい光景だった。
そうそう、パティが2番の歌詞を忘れた場面があった。
その時パティはギタリストにコソコソっと何か伝えて演奏はそのままに、彼女は観客に向かって
「歌詞、忘れちゃったの。私、歌っているとマインドが空飛んでっちゃって。」
と、鳥が飛ぶしぐさをしてみせた。
キュート!!!
「でも、戻ってきたわ。」
と笑顔で2番を歌い始めた。
会場からは拍手。
パティの歌は鳥のように自由に空を飛び、意志を持って目的地を目指すのだろう。
終演後、恐ろしく混み合った会場を出口に向かって歩きながらどんな人が来ているのかとざっくり周囲を見回しているとこんな会話が聞こえてきた。
「LINEのIDとか・・・」
目の前の男女が連絡先の交換をしていた。
席が隣り合っていたのだろうか。
出逢いは日常に転がっているものだ。
新しい出逢いに私も楽しい気分になった。
出口付近に写真を撮る人だかりができているスポットがあった。
勿論、見に行く。
戦争や原発についての詩も朗読していたので、即座に坂本龍一氏が思い浮かんだので本人が聴きに来ているかなと思っていた。
きっと、インスタやFBには同じアングルの写真が沢山見つかるだろう

この人に逢いたい!と先月はジョン・グレイ博士の公演に参加したが、2週間後に同じくアメリカ人のスーパースターに逢いに行っているなんて。
来月私は誰と逢っているだろうか。
6月4日。
伝説の人が目の前で力強く生きたメッセージを発している姿を見、音楽ひとつで旅ができる楽しさを改めて感じまた1つ音楽の楽しみ方を覚えた。



