昨日テレビのチャンネルを回していると、不意に近日ソルトレークシティーで開かれている映画祭に出品された、横田めぐみさんを始めとする拉致問題を取り上げたドキュメンタリーAbduction the Megumi Yokota Storyについて取り上げていたので、見てみることにした。日本テレビ系「ザ・ワイド」では、先日まで開催されていた Slame Dance Film Festival でドキュメンタリー部門の大賞候補となった本作品が世の中に出回る事によって、日本人拉致被害問題が世界中に宣伝・紹介される切っ掛けになり、それが拉致被害者救済の一助となるのではないかとの期待を寄せていた。しかしコメンテーターの中には、拉致被害者の家族が高齢化している中、”時間”が無いという現状も否定できないとし、映画で以て喚起された世論が政府を動かしていくという途方も無く時間のかかる運動の効果について疑問を投げかけていた。





日本での公開は決まっていない(もちろんアメリカでもまだ決まっていない)このドキュメンタリー作品について、日本のメディアが関心をもって取り上げたということはまず評価に値する事だろうと思う。また今回の作品がまったく独立した資金によって製作されたという点も重要だろう。これまで海外ではあまり知られてこなかった日本人拉致という問題を、アメリカ人の視点で描き出した本作品の意味は大きい。





しかしだ・・・私はこの報道に際して日本テレビが製作したVTRについて、そのクォリティーの低さには呆れ返ってしまった。取材クルーをソルトレークシティーに向かわせて、如何にアメリカ人が日本人拉致問題を知らないかということを表す為のインタビューVTRを作ったのだが、その内容たるや如何にアメリカという社会を理解していないかということが如実に語られていた。



一般のアメリカ人が如何に国際政治の問題、また連邦レベルでの政治問題や社会問題について疎いかということは世界に広く知られている。新聞の発行・購読数が群を抜いて大きい日本の方が、国民の一般教養のレベルという観点からすれば高いと言えるだろう。それはアメリカの田舎で生活していれば一目瞭然だろう。



問題のVTRはユタ州という田舎の、ソルトレークシティーという五輪開催地でもある都市で撮影された。映画のポスターを貼っている、所謂”そこら辺の通行人のおっちゃん”に、"Do you know anything about North Korea? "(日本語の字幕スーパーでは「北朝鮮の拉致問題について知っていますか?」この訳もおかしい)と聞いて、彼らが"Not really."とか、"Not much"などというつれない受け答えをしている様子を報道した。このインタビューをしたキャスターは英語でインタヴューができたからか誇らしげに、「アメリカ人の間での拉致問題についての理解は相当薄いようです」というようなコメントをしてしまう。





ハッキリ言うならば、これは明らかに聴き手が悪い。行き成り街に繰り出して、「北朝鮮について何か知っていますか?」という全く文脈も何もあったものではない質問をぶつけているのだ。これは日本語にして日本人に質問すれば、行間がまだ読めなくも無いので質問が明らかに拉致事件について聞かれていると判断する事ができるかもしれない。しかし英語というストレートな表現を常とする言語で、文脈もまったく無視して行き成り「北朝鮮について何か知っていますか?」と聞いても、「あまりわからないなぁ」と答えるしかないだろう。まず、英語という言語を全く無視した、極めて直訳的なインタヴューをしてしまうところに、日本のマスコミが海外に発信できない決定的な弱さを見た気がした。





また続けて指摘すると、聞く相手を間違っている。ソルトレークシティーの住人に、北朝鮮拉致問題というかなり”マニアックな”質問を投げかけて、ポジティブな答えを引き出そうと期待する事自体無謀だ。ただでさえ国民の教養レベルが低く、国際問題に関心の薄い国で、片田舎の地方都市の一般人にこの手の質問を投げかけてアメリカの世論を図ろうと言う事自体がナンセンスだ。もちろんニューヨークやサンフランシスコ・ロスなどの都市でインタヴューをすればアメリカの世論が図れると言うわけではないが、リベラルなアメリカの大きなうねりを作り、政治に具体的に影響を与える市民社会が生き生きと存在しているのは、大都市ではないか。







これら二つの点からもわかるように、日本テレビのVTRは明らかに結論ありきの構成になっていた。つまり”アメリカ人”は北朝鮮拉致問題について知らないという結論が先にあり、それをどうにか映像で象徴的に表現したい為にとにかくインタヴューをしてみようというものだ。そこには、もしかしたら”アメリカ人”でもこの問題について、何か知っているかもしれない(真偽はともかく)という可能性を全く排除した、極めて恣意的なVTR作りだったと言えるだろう。質問は乱暴極まりないし、明らかに視聴者に不必要な誤解を与えかねない内容であった。







何れにしても、このドキュメンタリー・・・内容はよくわからないが、日本で公開にはならないだろうか?