DCに来るといつも猛烈に雨に打たれるのは気のせいでしょうか!?先週末は所要でアメリカの首都ワシントンDCを訪れていた。私はこれまでに2回ほどDCを訪れる機会があったのだが、個人的には大変好感を持っている街である。しかしDCは他のアメリカ(私が知っている範囲で)とは違った空気のある街だ。それは街を歩いていても明らかに多い黒人、ヒスパニック系の人口に占める割合の高さ。連邦政府機関、国際機関、シンクタンクの本部、有名私立大学などが集中する知識蓄積型都市としての雰囲気。この点に関連して、スーツ姿の”頭の切れそうな”人たち。など、DCという都市はアメリカの違った一面を見せてくれる。


<黒人人口と犯罪率>

正確な犯罪率はわからないが、DCも他のアメリカの都市部の例にもれず高犯罪率という問題を抱えているのではないだろうか。先の大統領選の民主党予備選で唯一、アル・シャープトン氏が勝った場所がこのDCであったことからもわかるように、政治・社会・経済を考えていく上で、黒人のプレゼンスは例外的に高い。

私が日曜日の早朝DCを去る際に、動き始めのバスを乗り継いで都心部に向かった。そのバスの中で見る人はほとんどがアフリカ系アメリカ人であった(もしくはアフリカ系移民)。その途中でバスの乗り継ぎを待っているとある黒人に話しかけられた。話してみると、彼は東アフリカからやってきた移民で、その前の晩にクラブに友達と車で行ったのだが事故に会い車をレッカーされてしまったので、バスでどうにかして家に帰ろうとしているという。彼はいつも来るまで送ったりして彼の友人を助けているのに、彼が事故にあった時はまったく助けに来てくれない(=迎えに来てくれない)といって愚痴ってきた。

その彼がぼそっと言っていた言葉はなぜか印象的だった。一つ目としては、彼は自分自身をアフリカ系アメリカ人(所謂黒人)とまったく区別して考えているということ。"I'm an African."という言葉には何か強い意志が感じられた。また彼自身が貧しい国から来ているだろうにも関わらず、通りを徘徊しているアフリカ系アメリカ人を指し、アメリカの社会保障制度を批判していた姿も印象的だった。Georgia Aveという彼曰くDCでもっとも”危ない”通りがあるのだが、わけも無く徘徊しているホームレス、寝床も無くバス停のベンチに寝そべっているホームレス、疲れきった顔をして日曜日なのにも関わらず働きにです黒人達、ぼろぼろの車と家屋・・・その通りはパトランプが常にきらめいているところなのだ。

アメリカという国は繁栄と貧困が同居している典型的な社会だとはよく言われるが、まさにその絵図らが目の前に広がっていた。もちろん、パッと見た感じのその貧困度はアメリカ3大都市の比ではないのかもしれないが、整然と立ち並んでいる政府系機関とのギャップが余計に物悲しさを醸し出していた。


<アメリカと黒人文化>

私がNYで生活していた2年間を振り返って、何がアメリカを他の英連邦の英語圏の国に対してユニークな国にしてるかと問われれば、私は真っ先に”黒人文化”だと答えるだろう。私はイギリスやオセアニアには行った事がないが、カナダとアメリカを比較すれば、”黒人要素”がアメリカという国に与えている様々な文脈というものがくっきりと見えてくる。

1)性格
アメリカを訪れたことのある人なら大抵想像はつくとは思うが、一般化の弊害を恐れずに言えば、黒人はやさしく、不器用で、そこ抜けなく明るく、態度がでかく、ノリの良い音楽を聞いている・・・・こういった見方は偏見であり差別だと言う風に思う人もいるかもしれないが、私は正直に自らの体験を通じてこう感じた。そして私は今でもこのアメリカの黒人文化を懐かしく思うし、あまり好きではない面もあるが、何かこの文化に触れるとホッとする面もあり、つまりそれはアメリカに戻ってきたんだなと感じさせてくれる要素でもある。

アメリカという国自体のエネルギーややんちゃさ、奥の深さ、不器用なやさしさ・・・などはこういった黒人文化が実は反映されている面が大きいのではないかと思う。


2)貧困・犯罪

犯罪、そしてその元凶にある貧困というアメリカが持つ病魔は黒人コミュニティーに顕著に反映されていることが多い。犯罪率、貧困率(平均収入)、という二つの要素は圧倒的に黒人の間で高い。アメリカンドリームというのは確かに現在のアメリカでも可能なものだが、それは黒人にとってはかなり限られた門であることは間違いないだろう。John Edwardsが大統領選挙時に語っていた"Two America" thesisに描かれているように、コメディアンのブラックジョークになるように、アメリカは貧困と繁栄が無慈悲な程にくっきりと分断されている社会である。絶望的な目をしてアメリカの街を徘徊している黒人を見ると、物悲しくならずにはいられない。


3)リズム

黒人が圧倒的に"gifted"なものはその天性の音感だろうか。プロなんじゃないかと思うほど、そこらへんで”遊び”で歌っているだけの黒人達の作り出すハーモニーはもの凄く綺麗だ。特に女性人がハモリ出したら、そんじょそこらの日本人では太刀打ちできない。また彼らのリズムの取り方、ダンスの仕方、声量・・・この音楽という要素はアメリカが世界に誇れるのソフトの内の一つではないか。もともと歌・踊り・口承を基礎にするアフリカ文化にルーツを持つアフリカ系アメリカ人は、奴隷時代の体験なども相まって、一つの音楽の体系を築き上げた。


アメリカもカナダも名実共に他民族国家であることは確かだ。しかしこの2つの国は決定的にその中身が違う。それは移民の社会の受け入れ方の違い、移民人口・性質の違い、政治思想の違いなどこの2カ国を分断する要素は沢山ある。しかし私はその中で、このアフリカ系アメリカ人の持っている独特のプレゼンスが、アメリカ社会を一段とユニークにしているのではないかと思っている。

似ていて非なる国、アメリカとカナダ・・・黒人という視点から見てみるのも面白いかもしれない、と改めて久々に訪れたアメリカで感じた。